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ばう犬

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Apr 3, 2005
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岸見一郎 2003 不幸の心理 幸福の哲学 人はなぜ苦悩するのか 唯学書房


本書において著者は、幸福論をテーマにして、アドラー心理学の観点から論じている。著者は、自らの体験(恩師や父母との)に照らしながら、思索的に、ていねいに論じていく。本書には、著者が哲学と心理学を長年にわたって学んできた成果が凝縮されている。
著者が哲学と心理学を学ぶことになった経緯は、本書の中に著されているが、死の問題が著者に哲学を学ばせ、対人関係の問題に目を向ける中でアドラー心理学に出会い、その哲学的な精神に興味を持つようになったという。
アドラー心理学は「価値」の自明性を拒否する。既成の価値観を追認することなく、それを徹底的に疑う。このあり方は哲学の精神そのものである。
また、アドラー心理学では、「人は善を目指し、それを目的にしている」という観点から行動や症状などを捉えようとする。こうした理解の仕方を「目的論」という。著者がアドラー心理学を学んで最も強い印象を受けたのは、目的論を採用し、しかもそれを教育や臨床の場面で実際に応用している点であったという。この「目的論」に関しては、本書の中でギリシア哲学との比較などで分かりやすく解説している。


以下に、本書の中で展開されている考え方の幾つかを追ってみたい。

◆人は孤立した個人として生きているのではなく、対人関係の中で生きているので、対人関係における出来事によって、その人の幸福/不幸が影響される。アドラーは言っている、「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と。幸福について考えるとき、他の人の存在を問題にしないわけにはいかないであろう。
アドラーは、彼の心理学の中心的な攻撃点は「自分への執着」であると言う。他者の存在を認めず、また認めたとしても自分が中心に世界がめぐっているという考えを改め、他者との良好な関係を結ばなければ、自分一人だけが幸福になることはできない。

◆人の幸福/不幸は、その人に固有の特質(本書の中では「与えられた棘」とも表現される)によって決定してしまうわけではない。アドラーは言う、「何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかが重要である」と。
私という道具について見れば、これは他のものに置き換えることはできない。したがって、この道具をどう使いこなすかを知ることが先決である。そしてそのためには、この私という道具を好きにならなければならない。なぜなら、嫌っているがぎり使いこなそうという気にはならないであろう。では、どうすれば自分のことを好きになり、自分を受け入れられるかというと、自分についての見方を変えることである。

◆人生において経験する多くの出来事は苦しみであるかもしれないが、それをどのように解釈するかによって、その出来事は違ったものになる。苦しい(とされる)出来事やあり方、苦しみが、直ちに人を不幸にするわけではない。人がもしそのようなものによって、今のあり方を決定されてしまうのであれば、幸福も不幸も選ぶことはできず、ただ為す術もなく目の前に起こる出来事に翻弄されることになってしまう。


脳梗塞で倒れて半身不随となり、やがて意識さえも失ってしまった母親の病床に付き添いながら、著者は思ったという、「いったい、人間の幸福って何だろう? こんなふうに動けなくなって、しかも意識をすっかりなくしてしまったこの期に及んで、なお生きている意味を見い出すことができるだろうか」と。
お金や名誉を得ても動けなくなったら何の役にも立たない。それらは人生に意味を与えるものではないし、意識がないのであれば健康であることすら、人生の意味や幸福には関係がない。総じていえば、外的な条件、偶然的なものは人生の意味や幸福とはかかわりがない。(本段落は、本文のまま)
著者が言うには、そのようなものがあることは「幸福」ではなくて「幸運」である。「幸運」は外的なことや偶然的なことに依存している。そのようなものに左右されているかぎり、人は幸福になることはできないという。

読者は本書を読むことで、幸福と不幸について改めて(あるいは初めて)考えてみる機会を得るであろう。「幸福とは何か」また「不幸とは何か」というような問いに対して、簡単に答えられるものではないし、この答えは人によって様々であろう。本書で描かれる幸福は、著者が言うようにこれまで私たちがイメージしてきたものと違っていて、かなり刺激になると思う。

最後に、著者が本書の中で引用しているソクラテスの言葉を、私もここに引用しておきたい。
「大切にしなければならないことは、ただ生きることではなくて、善く生きることである」
この言葉に関しては、著者が本書の中で詳しく解説している。





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Last updated  Apr 3, 2005 09:27:08 PM
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