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ばう犬

ばう犬

Oct 20, 2005
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カテゴリ:哲学/思想/科学
松村道一 1998 神経科学の最前線 数理科学,36-1,5-13.


本論文は、これまで脳機能の解明のために研究者が明らかにしてきたこと、そしてそのために開発されてきた方法について解説している。


◆心のありか

西洋でも東洋でも、心のありかに関しては様々な説が提唱されてきた。精神は脳に存在すると最初に考えたのは、古代ギリシャの医学の祖ヒポクラテス(紀元前5世紀)であるとされる。古代ローマ時代の医師ガレノスは、ヒトや動物の脳を解剖して、液体の満ちた空洞(脳室)がその実質よりも重要な部分だと考え、ここに霊気が貯えられるとした。
そして、本格的な脳機能の研究が始まったのは、人類が電気を自由に操れるようになってからであった。これは、神経活動が基本的に電気現象であるためである。

* 原文を読んでいて、ボディワーカーとしては、「心のありか」というタイトルと内容(との関係)にちょっと引っかかりましたが、まあ、いろいろな認識があるでしょう(ばう犬)。


◆機能の局在

脳がその領域によって働きが違うということ(機能分化)が、臨床報告によって明らかにされてきた。たとえば、大脳皮質の中に言語を司る領域が存在することは、19世紀後半のブローカやウェルニッケの報告によってわかったことである。
しかし、臨床報告だけでは再現性の乏しい一例報告に終わってしまうことが多く、そのため、動物の脳に実験的に損傷を作り、その症例を観察することによって機能局在を明らかにしようとする研究が行なわれるようになった(破壊実験)。


◆肉眼解剖学から組織学へ

大まかな脳の分業がわかったからといって、脳の情報処理のメカニズムが解明されたことにはならない。そこで中枢神経系の理解のためには、どことどこが繋がっているか(神経回路)を解明することが最も重要であると、多くの研究者は考えた。
中枢神経系の基本単位はニューロンである。このニューロンがシナプスと呼ばれる結合部位で、次々と連絡されて神経回路網を構成しているのである。ニューロンは軸索を次のニューロンまで伸ばしているために、この軸索の走行を注意深く追いかけていけば、自ずと神経回路は解明できるはずであった。そして、そのために多くの方法が開発されたが、何億ものニューロンから出ている軸索は、それぞれが何百となく枝分かれしてターゲットのニューロンと結合しているため、それを1つ1つ確認するのは事実上不可能であった。


◆電気生理学の時代

オシロスコープと微小電極の発明によって、1個のニューロンの電気活動をテレビ画面のように直接この目で確かめることができるようになった。こうした測定技術の進歩によって、情報伝達の基本単位は、活動電位と呼ばれる電気的パルスであることが明らかにされた。ニューロンの細胞体に発生した活動電位がシナプス部分に到達すると、伝達物質と呼ばれる特別な物質(多くはアミノ酸やペプチド)が放出され、次のニューロンへと受け継がれていく。この物質の作用によって次のニューロンは活動電位を発生するのである。


◆ソフトウェアの解明

神経回路を解き明かすハードウェアの研究指向に限界が見え出した頃、今度は一転してソフトウェアが重要であると考えられるようになってきた。つまり、認知や行動のためにはどの領域のニューロンがどのように使われているのか、学習や記憶を支えるためにはどのような変化がニューロンに生じているのか、という問題が脚光を浴びるようになってきたのである。
麻酔下で実験が容易にできることから、研究はまず感覚情報処理の分野から進展した。運動制御の研究はやや遅れてスタートした。麻酔下では運動が起こらないからである。1960年代半ばになって、オペラント条件づけ学習を利用した行動制御が実験に導入されて、サルの運動野ニューロンの活動と随意運動との関係が明らかにされた。


◆非侵襲性技法の発達

1980年代になって多くの非侵襲性測定法が実用化されると、従来は動物実験でしか確かめられなかった脳機能が、ヒトを使って調べることができるようになった。以前から脳波や筋活動の記録は行なわれていたが、これらの古い測定法も次々と改良が加えられている。PET や機能 MRI で測定しているのは、その領域のニューロンそのものではなく、その活動を支えている血流量の変化である。したがって、時間的解像度にも空間的解像度にも限界があることになる。
PET や機能 MRI で得られた結果に以下のようなものがある。PET を用いた言語機能の研究によって、ブローカやウェルニッケの言語野が決して均質なものではないことが明らかになってきた。機能 MRI の画像は、細かなモジュール単位が大脳皮質に存在することを示唆している。


◆脳機能の合成へ

仮想ニューロンに生理学的なデータを与え、解剖学的な知識から組み立てられた回路を構成すれば、この仮想神経回路がどのように活動するかをシステマティックに解析できる。このように生理学的な束縛を逃れて、純粋に数学的あるいは工学的なモデルを採用することもある。いわゆるニューラルネットである。
しかし、このようなニューラルネットの構造は、解剖学的構造と合致しない。エレメントのレベルからいきなり機能を考えようとするのは、階層的な飛躍を伴ってしまうことになる。著者によると、中枢神経系の情報処理が中間階層をなすモジュール構造を介していることが、新たなニューラルネット構造のヒントになる可能性がある。


◆おわりに

著者は、脳機能の解明のためには様々な視点と方法論が要求されており、今後ともその傾向はますます強くなると述べている。そして、それら全ての知識を最終的に統合するのは、我々の未だ知らない新しい哲学であると示唆している。





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Last updated  Oct 20, 2005 09:44:46 PM
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