カテゴリ:仏教の2500年
鈴木正三は、仏教に裏づけられた職業倫理を説きました。江戸初期という時代において、商業利潤の正当性を論じ、商業の地位を評価しました。正三の生きた時代は、商業について、モノを生産せず、造作もせず、ただ流通させるだけで利潤をあげる「賎業」という見方が強かったのです。これに対し、正三は、あらゆる職業が世のためになっているのだから、それ自身が仏行に等しく、職業に尊卑はないと説いたのです。正三は、世俗の職業に励むことが仏道に通ずる修行の道に適うものであるとし、出家をすすめず、在家を奨励しました。「万民徳用」という著書の中で、客との共存共栄、世間への貢献、長期的利益の重視という正しい道を踏まずに、「心悪しきときは賎業なり」と断じ、実業と虚業は業種や商品によって区別されるのではなく、「心悪しきとき」という倫理の問題だとしました。これは、実業に反するものを虚業とする、という考え方の最初の記述です。鈴木正三は、時代のはるかに先を行っていたのです。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年07月04日 06時41分21秒
コメント(0) | コメントを書く |
|