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翌年三月四日
さやかが瀬田のマンションを訪ねてきた。あの時から比べると髪も伸び、体躯も女らしい線が彫り込まれたようで、すっかり変わっていた。この歳の少女は成長が早い。 「先生、東亜大に合格しました」 「やったな。おめでとう」 「やっぱし、すごくうれしい。自分が認められたみたいで」 「やっぱり法学部?」 「文学部です。私、亮の意志を継いでやろうかなって思っているんです」 「ノンフィクションライターか」 「ええ、亮が残した本なんかを読んでおもしろそうだなって。だけどまた変わるかも知れません」 さやかは赤い舌を少しだけ出して笑って見せた。 「それでいいって前に言ったろう。そのとき、そのとき何かの目標があることがすてきなんだ」 「私にできると思いますか」 「分からないな。でも君津の助けがあるんじゃないか」 「亮ができなくて悔しかったことを、私全部やってやろうかな」 この娘ならできるんじゃないかな、と思って彼はさやかの君津とよく似た意志の強そうな横顔を見た。 あのとき富子をかばって蓮の犯行を見逃していたらどうなっていたか、つい考えてしまう。 記事が評価できたらクリックしてください 人気blogランキングへ お買い物なら楽天市場 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.08.11 22:29:39
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