地球人スピリット・ジャーナル1.0

2009/12/16(水)00:31

地獄は克服できる <1> ヘッセ

レムリア(108)

「地獄は克服できる」<1> ヘルマン・ヘッセ /フォルカー・ミヒェルス 2001/01 草思社 単行本 262p 原書1995 No.832★★★☆☆  年寄りの介護で行った病院の、土曜日図書館で、思いもかけずヘッセの「庭仕事の愉しみ」を見つけた。 それ以来、「人は成熟するにつれて若くなる」、 「ヘッセの読書術」、「愛することができる人は幸せだ」と読んできた。この草思社のヘッセ・シリーズの中でも、今日読んだこの本のタイトルは「地獄」とつくだけ、なんだか後回しにしたい雰囲気があった。タイトルの元になっているのは、たった一行の詩文だけであり、本文の中に、この「地獄」という言葉はでてこない。  地獄を目がけて突進しなさい。地獄は克服できるのです。断章11(1933年頃) P119  この本の原書は、危機と転換をテーマとして1995年にこのタイトルででているが、2001年には「人生を乗り切る」と改題されているようだ。  別の本では「さらば 世界夫人」として訳出されている詩は、この本では、ほとんど同じ訳だが、「さようなら この世さん」となって、ちょっとやわらかい感じになっている。この本はこの詩がエンディングだった。  ヘッセは1921年(44歳)2月と5月、C・G・ユングのもとで精神分析を受けたという。それに先立つこと1918年にヘッセは「芸術家と精神分析」p91を書いてフロイトやユングに触れている。あるいは、ちょうど同じ頃、スピノザについても触れている。  私ははじめてひとりの哲学者の本を読んで、その難解さにさんざん苦しんだのち、ようやく理解したときに、この上もなく甘美な錯覚に陥ったことをいまだによく覚えている。それはスピノザであった。p185  何度か自殺も試みたと言われるヘッセのことである。作品が自分の体験と緊密に関わりあう典型的なゲーテ・タイプではあるが、決して文章にされることのなかった深淵も数々あったに違いない。私はこの本を読むのは、ちょっとしのびないところもあるのだが、このような精神の彷徨があったればこそ、「シッダルタ」や「ガラス玉演戯」のような作品が生まれてくるのだろう。 <2>へつづく

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る