音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016/01/28(木)22:14

フィル・コリンズ 「アナザー・デイ・イン・パラダイス(Another Day In Paradise)」

洋ロック・ポップス(909)

80年代を締めくくり、90年代の扉を開くシンプルかつ深みのあるバラード  フィル・コリンズ(Phil Collins)はイギリス出身のアーティストで、ジェネシスの中心メンバーの一人。70年代プログレ・バンドとしての地位を確立したジェネシスは80年代にはよりポップになっていくが、ピーター・ガブリエル脱退後のジェネシスの方向性はヴォーカルも担当するようになったフィル・コリンズに負う部分が多い。ちなみに、その後は1996年にジェネシスを脱退、2006年にジェネシスを再結成するも、2008年に表舞台から引退を表明した。  ジェネシスでの活動と平行して、フィル・コリンズは80年代にソロ活動も展開し、数々のヒット曲を残した。そんな中でも、特大のヒットとなったシングルの一つが、この「アナザー・デイ・イン・パラダイス(Another Day In Paradise)」で、1989年末にリリースされ、翌90年にグラミー賞(最優秀レコード)を受賞した。  元プログレ・バンドだったジェネシスがポップに走り、ピーター・ガブリエル脱退後の中心人物となったフィル・コリンズがソロとしてもポップ・アーティストとしての道を驀進していった時、古くからのファンの中にはがっかりした人もいただろう。けれども、彼がやりたかった音楽性がこの路線であるとすれば、ガブリエル脱退というジェネシスでの変化は、彼自身にとってはいい方向に働いたと言えるような気がする。おかげで、私たちは、ソロ・アーティストとしてのフィル・コリンズを"発見"し、その上、「アナザー・デイ・イン・パラダイス」という最高のバラードにもめぐり合えることになったのだから。  落ち着いて聴いてみればわかるように、「アナザー・デイ・イン・パラダイス」という曲は、シンプルであるがゆえに美しいバラードとして成立しているように思う。それでいて、詞はストーリー・テリングの手法が見事に功を奏し、物語を紡ぐように淡々と歌われる。加えて、デビッド・クロスビーがバック・ヴォーカルとして参加している。  私はなぜかこの曲を聴くと"慈悲"という単語が頭に浮かんでくる。詩の中で歌われている街角の光景、"彼女"の行き場のなさから連想させられるのかもしれない。80年代半ばからダンスでポップなソロのキャリアを積んできたフィル・コリンズがバラードでも素晴らしい歌い手であることを証明した1曲である。 [収録アルバム] Phil Collins / ...But Seriously (1989年)  フィル・コリンズ/バット・シリアスリー(CD)               

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