音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011/05/31(火)07:18

マイケル・ランドウ 『テイルズ・フロム・ザ・バルジ(Tales From The Bulge)』

洋ロック・ポップス(909)

「世界一のギタリスト」による初リーダー作  ロック/ポップス畑で世界一のギタリストは?と尋ねられて、いわゆるロックの「3大ギタリスト」の誰かを挙げる人もいるだろう。ちなみに、3大ギタリストとは、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジなわけだが、よく言われるようにこれは日本での話で別に英米でそういう言い方をするわけではない。あるいは偉大なる実験者にして革新者であったジミ・ヘンドリックスを思い浮かべる人もいるかもしれない。また、80年代以降にもギター・ヒーローは多く出てきた。ギター少年たちの心をつかんだ代表格としては、エディ・ヴァン・ヘイレンやイングヴェイ・マルムスティーンなどが思い浮かぶ。さらに、セッション・プレイヤーかつTOTOのメンバーとしてその技術を発揮したスティーヴ・ルカサーという人もいる。  今回の話はそのルカサーが起点である。スタジオ・ミュージシャンとしてのルカサーのキャリアは隠れた世界一ギタリストと呼んでもいいもののように思う。そして、そのルカサーが「世界一のギタリスト」と評したギタリストがいる。それがこのマイケル・ランドウ(Michael Landau)という人物だ。  1958年ロサンゼルス生まれのランドウは、実はルカサーの1年後輩で、TOTOのギタリストの座をルカサーと争った人物である。結局、ルカサーがTOTOのメンバーに収まるが、TOTOの活躍と並行する時期に、ランドウはセッション・ミュージシャンとして80年代~90年代に売れっ子となった。ソロ・アーティストというわけではないので、その名前が目立つことはなかったが、録音に参加したアーティスト名を列挙すれば、その活躍ぶりがよくわかる。ピンク・フロイド、マイルス・デイヴィス、マイケル・ジャクソン、ロッド・スチュワート、リチャード・マークス、ジョニ・ミッチェル、ジェイムス・テイラー…。そうそうたるミュージシャンたちから信頼され、そのバックをサポートしている。さらに加えておくと、日本のアーティストの作品にも参加経験があり、浜田麻里、矢沢永吉、氷室京介などの録音に関わっている。  そんな彼が独立したミュージシャンとしての活動を始めたのは1990年前後からであった。本作『テイルズ・フロム・ザ・バルジ(Tales From The Bulge)』は、彼のソロ第1弾として1990年に発表された。その後もソロや自身のバンドでの活動を続けている。  さて、本盤の内容だが、もちろん全編にわたってインストルメンタル。この手のアルバムにありがちなのは、セッション・ミュージシャンや大物バンドの1メンバーの初ソロということで、小ぢんまりし過ぎて何がやりたいのかぼやけてしまうというパターンがある(特にジャズロック風アプローチにこの危険性が高い)。けれども、本盤はランドウの才能からか、そうはならず、実に聴いて気持ちいい仕上がりになっている。  その理由は、作り込み方の工夫にあったように思う。曲自体や編曲には凝ったものもあり、サックス(ウェイン・ショーターがゲスト参加している)を取り込んだり、複雑なテクニックのプレイも織り込んではいる。こういう工夫だけで終わるなら、“小ぢんまり”収まってしまうのだろうが、基本はロックサウンドですっきり聴かせることを常に念頭に置きながらそういう工夫をしているように思われる。そしてそのロックっぽさこそが、本盤を退屈にしなかった重要な要素なのだろう。複雑にしてストレート、と言えば、通りはいいが、実行するのは難しい。しっかり鳴らすべきところを心得て、しっかりロックしながらギターを鳴らす。それをうまくやってのけているという点で、本盤はお見事な職人芸の1枚だと思う。 [収録曲] 1. I’m Buzzed 2. Judy 3. Chynna 4. Johnny Swing 5. Big Bulge 6. Roodis Tones 7. Easter 8. I Don’t Care 9. My Bulbous Meathead 10. I’m Hating 11. Americana Boy (ボーナストラック) 1990年リリース。   下記ランキング(3サイト)に参加しています。   お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします!         ↓           ↓           ↓            

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