テーマ:Jazz(1977)
カテゴリ:★★★☆
巷では評判が良いこのCD、残念ならが猫麻呂の好みではなかった。
まず最初に、この作品の魅力を挙げておこう。まずは録音の良さ。さすがはヴィーナス作品だけあって、音が艶っぽくて低域もグーンと伸びる。我が家のオーディオも喜んでいるようだ。次に、キンドレッドという超マイナーな正統派テナーマン(?)を発掘し、日本で録音した点である。サックスのビブラートが好きなベンハー(ベン・ウェブスター派)には、録音の良さと相まって、垂唾の一枚なのだろう。また、選曲がジャズファンには胸キュンもので、美味しいスタンダードてんこ盛りなのである。しかも、今なら紙ジャケでのエロジャケもついて、たったの2千5百円。どーですか、お客さん!録音・選曲・ジャケデザイン・企画性のいずれについても最高の出来栄えであり、こんな優良作品にケチをつけようもんなら、即刻、特高警察に連れて行かれてしまうかもしれない。 さんざん褒めちぎったので、そろそろ本音タイムと行こう。まず、キンドレッドのテナーの音が下品なのが気に入らないのである。音程を下からすり上げる奏法、これが下品極まりない、と思っている。ベン・ウェブスターもこの奏法を多用してるではないか・・・と反論されそうだが、ベン・ウェブの場合は音色が奥ゆかしいから許されるのである。ベン・ウェブはジョニー・ホッジスの奏法をテナーに取り入れてみた、ということらしいが、キンドレッドの場合は、ソニー・クリスの奏法をテナーに取り入れたかのような感じだ。個人的には好きではない。 ベターっとした吹き方も気に入らない。ご存知の通り、猫麻呂はジーン・アモンズやロックジョー・デイヴィスをはじめ、ジミー・フォレストやアーネット・コブ、デクスター・ゴードンにソニー・ロリンズといったホーキンス系テナーマンが基本的には大好物である。好きなテナーマンに共通しているのは、コテコテなのにドライな点だ。小賢しいフレーズは吹かないどころか、"ブヒッ!"一発で決めてしまう大胆さが好きなのだ。ブルージーなイメージがあるが、実はこの界隈でベタベタなフレーズを一番使っているのがソニー・スティットとバディー・テイトなのである。だから、猫麻呂はこの2人はあまり好きではない。キンドレッドは、猫麻呂的には、キンドレッドもスティットやテイトと同じベタベタ系なのである。一部の評論家はキンドレッドをゲッツに似ていると思っているようだが、どこに耳を付けとるんじゃ、ボケッ!と言いたい。ちょっとラテン~ボサでやってるからといって、似ていると思うのはあまりに短絡的。ゲッツはクールネスの脇から漏れ出てくるエモーションのチラ見せがエロチックなのだ。キンドレッドのように「いきなりモロ見せ」とは正反対なのである。 最後に、テナーマンとしての個性が薄いことも言っておこう。ホーキンス系テナーマンは、数小節聴いただけでも誰が吹いているか分かってしまうような個性的な音とフレーズを持っている。キンドレッドについては、あまり聴き込んでいないからかもしれないが、「誰かに似ている」ところはあっても、「ああ、キンドレッドだ!」という必殺技がない。つまり、顔が見えないのである。メンバーを総入れ替えした「笑点」の「大喜利」を見てもつまらないのと同じなのだ。 さて、このままでは非国民として吊るし上げにあうかもしれないので、ヨイショをひとつ。録音と選曲の良さは最初に書いたが、John Di Martinoのピアノが痒いところに届く名伴奏ぶりが素晴らしい。キンドレッドと共に、徹底した「中庸」ぶりが、聴き手に心地良さ与えるとも言える。(でも、猫麻呂的には魂を揺さぶられないのだな・・・。) 猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5) Bob Kindred / Blue Moon (Venus) 1. Do Nothin' till You Hear From Me 2. Body And Soul 3. Moon And Sand 4. In A Sentimental Mood 5. Blue Moon 6. Time On My Hands Bob Kindred(ts), John Di Martino(p), George Mraz(b), Ben Riley(ds) Feb. 26-27, 2004 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年09月08日 14時35分10秒
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