テーマ:Jazz(1977)
カテゴリ:★★★★
なぜこのCDを買ったのか記憶が定かでないが、恐らくテレル・スタッフォードの名前を見つけて米尼損のマーケットプレースでポチッたのだろう。ポール・カーとはどんな人?と思ってネットで検索してもほとんど情報は得られず、手がかりとなるのはCDのライナーとVento Azulさんのネットショップでの紹介記事くらいだった。(Vento Azulさんの記事はこちらです。)
CDのライナーによると、ポール・カーはテキサス州ヒューストンの出身。アーネット・コブ平やドン・ウィルカーソンという正統派テキサス・テナーの洗礼を受けて育ったと自身がライナーで書いているが、音を聴く限りはコブ平やドン・ウィルカーソンのような下品さは(残念ながら)かけらもない。それでも音が太いのは、テキサスの血なんだろうか?(写真を見ると、マウスピースはラバーを使っているようです。) 自身のライナーにはこんなことも書いてあった。80年代後半のある日、ポールが学生か駆け出しのテナーマンだった頃、憧れのジョー・ヘンダーソンがワシントンに来た(ポールはワシントンに居た)時にジョー・ヘンの追っかけをやったらしい。初日のライブではジョー・ヘンに話かけるきっかけがつかめなかったが、2日目には意を決してジョー・ヘンと話すチャンスを得た。ジャズ・ミュージシャンとしての生き方についての薫陶を受け、その時にジョー・ヘンから貰ったサインに"To Paul, Musically Yours, Joe"と書いてあったのだそうだ。このCDの名前の由来には、こんな心暖まるエピソードがあったらしい。エエ話やなぁ・・・。 こうやって、文献だけでブログを書いていると、どこぞの大学職員で自称ジャズ評論家の先生のようになってしまうので、ちゃんと聴いたことも書いておこう。第一印象としては、「手堅い演奏」というイメージだ。ポール・カーは破綻も脱線もせず、ひたすらジョー・ヘンが憑依したかの如く吹きまくる。あまりにもマジメにジョー・ヘンをやるので、逆にジョー・ヘンの飄々としたところが消えてしまい、「ジョー・ヘン聴くなら本家で聴くワイ」という気がしなくもない。こうして危うくお蔵入りしそうになったところで、ポールがジョー・ヘンの追っかけをしていた話を思い出しながらもう一度聴いてみた。すると、ポールのジャズへの想いやジョー・ヘンへの思い入れが伝わってくるのだ。ポールをひとりのジャズマンとして見ると、この作品のアプローチは残念ながら月並みであり、内容は悪くはないが取り立てて大騒ぎするほどのものではない。しかし、ジョー・ヘンの追っかけをしていたポール少年が二十年程後になって、ジョー・ヘンから貰ったサインをタイトルにしたトリビュート作品を作るなんて、ジャズオタとしては最高の花道ではないだろうか。そう、ポール・カーとは一種のジャズオタなのだ。そう思って聴くと、ひとつひとつの音に想いが詰まっているようで、感動的ではないか?特に最後の"If you could see me now"の無伴奏演奏はジーンと来ますよ。いやー、メルヘンですねェ・・・。 そう言えば、テレル・スタッフォードのことに何も触れていなかった。この作品では、所詮はジャズオタ・テナーのアシスト役なので、自分のカラーが出せていない感がある。テレル君じゃなくても他の誰でも良かったのだろうし、そもそもこの作品にトランペットは不要だったのでは?と思ってしまう。それでもイイ仕事するなー、テレル君。イイ仕事といえば、この作品はルイス・ナッシュの職人芸が支えているともいえるだろう。手堅いながらもエキサイティングなドラミングには、いつ聴いても惚れ惚れする。手堅いジャズマンを集めて作ったこのオタク作品、どう考えても採算面では大赤字なんだろうけど、道楽なんだから仕方ないか・・・。 猫麻呂ポイント:★★★★(4.0) Paul Carr / Musically yours (PCJ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月14日 11時47分06秒
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