ずっと気にかかっていた本
『緑のハインリヒ』ゴットフリ-ト・ケラー(岩波文庫)という本、4巻もある読んでいない持ってもいないだけどずっと気にかけている本若いころいつも本屋でこの岩波文庫の本を手に取ってみていたドイツの小説らしい、風景描写の多い本だなーとぱらぱらみては、4巻もあるのと部厚いのとで「またこんど」と思ってしまうのだったすーっと本屋に並んでいると思ったがいつの間にか廃版になってしまったところが中年になったころ、母とのおしゃべりで亡くなった叔父が大好きな本であることがわかった美しい自然が細緻を極めて描かれていて、いくら読んでも飽きないと言ったらしい母が(叔父の姉にあたる)が「そんな本、どこがおもしろいのか?」とからかっていたのがわたしの気に障り「よーし、いつか読んでみよう」と思ってまた、何十年叔父は晩年になっても姪のわたしにさえ普通の会話ができなかった変わり者だったがわたしはその本のことを聞いた時からなおに好きになった叔父は帝大理学部出の物理学者、しかし戦中の学生時代と、戦後化研に就職してもうまくいかなく、ノイローゼになったり不遇な青春を過ごしたひと4歳のころ静岡の母の実家で白い煙のでる塊を持ってきてトマトを冷やしてくれたのを魔法みたいだと目を丸くして見ていた記憶が懐かしい叔父が学校の実験室で使うドライアイスを持ってきたのだろうがだまっているけどもあたたかい情感のこもった叔父だったというわけでずっと気になっていた本の情報が今読んでいる児玉清著『寝ても覚めても本の虫』の「夢ふくらませたスイスの物語」という項にあるではないかあー、ドイツの風景ではなくスイスだったのか教養小説、自己形成小説なのだたぶん学生だった児玉清さんら当時の若者に多く読まれたのだろうねとネットの情報も加えて今ごろになっていろいろと知ったのであったさて、1990年に改版として再版されたのもわかったが、それももう廃版古本としては値がついている図書館で借りていつか読めるかどーか、どーするか