よみがえり
『とめどなく囁く』桐野夏生年の離れた資産家の男と再婚、贅沢な邸宅での穏やかで豊かな暮らしを、手にした41歳のヒロイン早樹。男と女のそれぞれの前婚の事情がよみがえり、得体の知れないところからの中傷的囁きに翻弄される物語。はじめは昔読んだデュ・モーリアの『レベッカ』やアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を思い起こさせられた。が、母衣山(〇露山がモデルですね)は「マンダレイ」のお城とまではいかなく、クリスティーのは意識の流れのなかでのミステリーで、それを現代に持ってくるとSNSでの外野も加わり、ラインやスマホを駆使してのスピーディーな展開は、超現代的で目まぐるしい。やはりヒロインのそくそくとした不安や苦しみは変わらないのだけども。思うに、昔のロマンチックな物語と違うところは、自己成長や確立を自主的に行うところを、より強く強調されているところだろう。運命に流されて行くっていう方が、どんなに楽だか!