2008/01/18(金)10:39
ハードボイルド・アイランド
グリーン島のビーチ。正午。デッキチェアに寝そべっている。
朝、シュノーケリングに出かけようと水着に着替えたら、突然のスコール。あきらめてベッドに引き返し、本を読む。
わたし、田村隆一「詩人のノート」。くまは村上春樹。「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」。
日本を出るとき、どの文庫本をトランクに詰めるか、本棚の前であれこれ話し合っていて、「これはどんな物語?」とくまに聞かれた。
「それはね…」と説明しようとして、頭のなかが空っぽであることに気づく。
村上春樹の小説がわたしは大好きなのに、いつもそうなのだ。
読み終わって数日で、登場人物もあらすじもすっかり忘れてしまう。
でも、時間も空間も歪むほど夢中になった感じだけはよく覚えていて、「とにかく面白いの!」と強くすすめる。
ひとつめの質問に思うような答えが返ってこなかったくま、さらに質問を重ねる。
「ハードボイルドってどういう意味?」
「それはね…固ゆで卵…」と言ったきり、言葉に詰まるわたし。
日本に帰ったら、ちゃんと調べよう。
元に戻って、グリーンアイランド。
「詩人のノート」を2、3ページ読んだところで、あっという間に眠りに落ちてしまう。
この島は、何だかやたらと眠くなる。ぬるい空気のせいだろうか。
1時間くらいで雨が小降りになったので、ダイブショップでシュノーケリングの道具を借りて、海へ入る。
魚。魚魚。珊瑚珊瑚珊瑚。魚魚魚。今日は吐き気もしないから、休憩を挟みながら何回か潜り、よく眺める。ゴーグルの締め付けがゆるいと、鼻に水が入ってくる。この海の水は、日本のよりしょっぱい気がする。
そうこうするうち、晴れてきた。
シャワーを浴びて、水着でビーチへ。
ビーチの売店でペットボトルの水を買ったら、3ドルもした。ホテルで物を買うと高いのは万国共通。
この島にはリゾートホテルが一軒あるきり、あとは何もないので、必要なものはホテルの施設ですべて手に入れなければならない。
ビーチは波打ち際が白く、少し向こうが鮮やかな水色。沖へ行くにつれ、藍色っぽくなる。藍色のところは、海底に黒っぽい海藻が生えているのだ。
くまはipodを耳に差し込み、デッキチェアに寝そべって目をつむっている。オーストラリアの紫外線は日本の3倍もあるので、みるみる肌が焼けていく。
わたしは入念に日焼け止めを塗り、パラソルの下で帽子をかぶって海を見ている。昨日は夜、頭がすごく痛くなったので、日に当たりすぎないように気をつけなければ。
ときどき、腰まで水に浸してみる。海水は冷んやりしている。
波打ち際に、無数の小魚が群れている。足を近づけるとぱっと散り散りになる。砂の上に打ち上げられてひからびてしまうんじゃないかと心配になるほど、ぎりぎりのところを泳いでいる。島そのものが珊瑚だから、魚にしてみれば、陸地に近寄っているというより、珊瑚のそばの浅瀬を泳いでいる感じだろう。
鳥も来る。明け方、日の出を見るためビーチに出てきたときは白いしぎのような鳥が、昼間は例の茶色い飛ばない鳥やかもめ。
そう言えば、朝食を外のテーブルで食べようとして、くまがバイキングの皿を置きっぱなしにしたら、大きなソーセージを2本、鳥に持っていかれていた。ボーイも周りのお客さんも、のんびり笑っている。くまはしばらくの間落胆していた。