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sarisari2060

sarisari2060

2005.04.22
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カテゴリ:エッセイ
サイトのトップに「迷子の道しるべ」というのを書いている。

自分のうろうろする思いをとどめておく言葉だとか
標識のように自分の愁眉を開いてくれたことだとかを
きままに書き連ねている、

最近のはこうなふうだ。

――中国での反日運動の様子をテレビで見る。
わたしたちの国はこんなに嫌われているのだなあと思う。

しかし、わたしたちもそのひとたちを
好きでいられるだろうか、と不安になったりする。
 
国と国とのパワーゲームとしての外交とは
少し違うレベルでその思いの行き先を案じてしまう――

ごまめの歯軋りのようなことであるなあとも思うが
自分にとってどうなのかと問えばそういう答えになってしまう。

中国に関してこんなふうに書いたのはちょうど一ヶ月前のことだった。


――中国では村上春樹がよく読まれているのだと
NHKの視点論点で同志社大の朱教授が言っていた。

全作品で200万部。
ノルウェーの森は6冊100万部だとか。
上海など大都会で売れているそうだ。
人口比でいうとどうなのかなとも思うが
村上春樹を愛読するひとたちの間では
「とても村上的」という形容詞を使って
こだわりのある生活の質をあらわすのだという。

「村上する」という動詞もあって
これは村上の本を読むことらしい。

サッカーの試合などで垣間見る中国のひとの
日本大嫌い!みたいな空気と
「とても村上的」という形容詞が
なんだかむすびつかないなあとか思って聞いていた。

村上春樹を愛読する層は小資、プチブルであり
有名ブランドではなく自分のこだわりのブランドを好み
自由を愛し、干渉を嫌う。
そして、経済や政治の主流を冷笑するような
アウトサイダーたちなのだそうだ。

8,90年代の中国の価値観のゆらぎのなかで
生まれてきた層なのだ。
愛国心に燃える熱いサポーターたちとは異質の層だ。

あの大きな国のなかには
いろんな時間が流れているようだ。
ひとびとの時計の針がてんでに回っているようだ。

たくさんの犠牲をはらって平等であろうとした国が
だんだんに変わっていく。

昔々の中国には世の中を斜めにみているような
仙人のような賢者もいたよなと思ったりもする――



最近の一連の抗日デモに参加するひとたちは
村上的な暮らしを送ってはいないように思える。

私有化のゲームではずれを引いてしまったひとたちは
かつての共産圏のどの国にもいる。

「資本主義形成の要は、生産手段や資金の急激な私有財産化である。ここに万人の間に、また諸民族の間に、社会的ストック=国富のぶんどり合戦が突如開始される。

・・・うまく立ち回ったもの、また民族はより大きな資産のオーナーとなり、そううまく立ち回れなかったもの、また民族は前者に雇われるしかない賃労働者になる。

・・・万人の心中に自分や自国民はこの・・・ゲームに負けるかもしれないという不安感情が急速に上昇する。

また、他人や他民族は何か汚い手を使っているかもしれないという不信感情があっという間に人々を苦しめる」



「ユーゴスラヴィア」という著書のなかで岩田昌征氏はこんなふうに書いている、と米原万理さんが「魔女の1ダース」に引用していた。

これは中国にも当てはまることなのかもしれない。その前者や「村上的」なひとびとであり、後者がデモに参加している人たちなのかもしれない。

その不安感情を誰に向けるのか、というときに格好の標的となったのが、因縁の多い日本であったのだろう。

大使館や日本店に投石をするひとたちの顔つきはどんなふうに見えるだろう?
日本車をけり続けるひとはどうだろう。
どこかに満たされないものをもっているひとの表情に見えたりもする。

米原さんの文章にこんな言葉がある。

「視野の狭さ、傲慢な押し付けがましさ、無知ゆえの自信過剰と独りよがり、異なる文化や歴史的背景に対する信じがたいほどの想像力の欠如というのは、はた迷惑も甚だしい。特にそういう精神の持ち主が強大な武力を背景にしているときは、悲惨だ」

これはロシア語の通訳として経済のシンポジウムに参加する米原さんの体験から出ている言葉で、英語を母国語とするひとびとの想像力の貧しさを言っているのだが、たくさんの場面で感じる言葉でもある。

そしてそれは、相手を責めるだけでなく、自らも裁く言葉であるようにも思う。

外交がトランプゲームのようにブラフの応酬になっている部分も少なくないように思う。情報があふれているようで本当のことは知らないなんてことも多い。

「愛国無罪」という言葉の意味も、本来は、愛国のためにしたことは無罪であるというのではないのだと、あるブログで知った。http://plaza.rakuten.co.jp/boushiyak/diary/200504180001/

その「書評日記  パペッティア通信 」には

「愛国無罪は、「愛国に罪はない」といっていたのではない。
愛国が有罪であるならば、その罪をひきうける覚悟の言葉として発せられた、
自らを牢獄に入れるようもとめた反政府運動のスローガンである。

とあった。

「反政府」という言葉が重い。
投石は違う方向に投げられるものだったのかもしれない。

国と国との事情はそれぞれ違う。気質も違うのだ。
そんなことを改めて思案する道しるべである。





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Last updated  2005.04.22 08:55:24
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