今日な、東京駅の大丸の12階で
おもしろいおっちゃんにおうたんや。
そのおっちゃんには
いろんな顔があっておもしろいねん。
つまりこういうひとなんかな、と思うと
次に瞬間にまた全然ちがう顔したはるところが
なんかつかみどころがないようで
おもしろいねん。
どこにもかぎりがないみたいな感じがするねん
それはもういろんなこと試したはるねん。
色やったり線やったり文字やったり
モザイクみたいなんやったり
小さな額縁のなかで
いろんな実験したはるみたいやねん。
それおもしろいねん。
1879年にうまれたひとがそんなことやったはるねん。
大正天皇や永井荷風と同じ年にうまれたおっちゃんやねんけど
それがえらいモダンやねん。
そのどれもがそのおっちゃんなんやけど
わたしはこの「わかれ」ちゅう作品がいちばんこころに残ってる。
皺のいった茶色いただの紙に
ふとい筆でしゅうーっと描いたあるだけの線が
ずーっとこころに残っていくねん。
この絵をみながら一歩ずつ後ずさりしてみたら
だんだんせつないきもちになってくるねん。
ああ、お別れやねんね、って思えてくるねん。
お能ていうのは型が大事で
その型でいろんな感情をあらわすことができるって
だれやしらんがいうたはったけど
この絵はそんな感じやねん。
わびさびやねん。
このおっちゃんのすごいとこは
目に見えてるものを越えてることやねんて。
並んでるどの作品みてもそやなあって思うわ。
ボクのこころはこんなふうに掴み取ってるんやでって
どの作品からも聞こえてきそうなんや。
おっちゃんの名前はぱうる・くれえっていうねんて。
ほんまにおもしろいおっちゃんやったで。