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文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2008.01.23
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カテゴリ:ひとりごと
小説教室に通い始めて2年ちかくたって
改めて小説というものについて書かれたものを読み始めた。

そういうのを全く読まなかったわけではない。
小説の書き方(井上光晴)「短編小説講義」(筒井康隆)
「短編小説のレシピ」(阿刀田高)
スティーブン・キングのも読んだ。

読んだけれども、そういうものなんだな、とは思えても
あまりピンとこなかった。

教室では実践あるのみ、とばかりに
まず、書いてくださいといわれた。
そういわれて、よくわからないけれど
こんなふうでいいのかなあと思いつつ書き始めて
2年が経って、作品もいくつか書いて
つづきを書こうと思ったら書けなくて
あれれれれ・・・・
書き方がわからなくなったぞ、という感じなのだ。

まったく泥縄なのだけれど
ドラッグストアに駆け込むように図書館の書庫の前に立った。
書棚には小説の書き方についての本がたくさん並んでいた。

こんなにたくさんのひとが書いているということは
そういう需要があるということで
つまりはたくさんのひとが
小説の書き方の迷子になっているということか
となんとなく見えない仲間に出会ったような気がしたのだった。

それでもやっぱりその本にすがるように手が伸びた。

「短編小説礼賛」(阿部昭)
「小説の秘密をめぐる十二章(河野多恵子)
「現代小説の方法」(中上健次)
「小説論」(金井美恵子)
「小説修業」(小島信夫 保坂和志)

読解力もないのに
そんなに読めやしないのに5冊も借りてしまった。
不安の表れなのだなと苦笑しながら。
案の定まだ二冊半しか読めていない。
読めずに返す本もあるかもしれないが
ま、であっただけでも安心材料になるのなら
それはそれで意味があると思うことにする。

これらの本を、小説に書き出す前に読んだとしても
やっぱりよくはわからなかったと思う。
今の状況で読んでみると、前よりは
ああ、そうだよね、と共感することが多いように思う。
むろんへーそうだったのか、と驚くこともあるが。

たとえば、阿部氏の言葉
「ものを書く力というのは思い出す力だということである
・・・思い出す力はおのずから深く感じる力でもある」
には、頷く。

あらゆる情景は自分の記憶のなかから探り出さねばならない。
たとえば一枚の写真が教えることがあるとして
その写真のどの部分を見ていたかによって蘇る箇所がちがう。
印象深く受け取ったそらのいろなら
文章で蘇らせることができるかもしれない。

中上健次の本は講座を収録したもので
しゃべり言葉のままの活字なので
むずかしい思想的な話が飛び飛びになされて、
なにが言いたいのかがうまく受け取れない。
こんなの知っていてあたりまえとされる教養が
こちらにはないので、ため息がでる。

しかもこういわれてしまう。
「小説の書き方をいうのは、
当然今の時代ですから小説の読み方にも通じる。
大体よく読めない人間というのはよく書けない。
そういう相関関係をもつ形のものだと思うんです」

そ、そうかあ。そうだったのかあ・・・。
と痛い思いをしたりする。


それでもこれはわかる。
「簡単に苦労しなくてすむような所っていうのは
小説は生まれない。そんなことは気にしない状態で
・・・直にその場所に行くことによって、
小説が本来与えてくれるいろんな起伏や
あるいはカタルシスみたいなもんができる。
あるいは描写された文章がきらきら光る。
・・・歩くことによって・・・密室に閉じ込められてものが
その行動を書くことによtって
社会全体みたいなものがその後ろに書ける」

「物を定住の側から見るんじゃなくて
漂泊の側から見る。・・・遊牧的にものを見る」

「小さいものが流されていく。
これが基本的に主人公として決定されている条件・・・
流された者は傷を受けた者である・・」

なるほど・・・なるほど・・・
ってなんと分かることのすくないことか・・・。

しかし河野多恵子さんの本は幾分わかりやすい。
というか、とても親切だ。

文章の呼吸。作品の育て方。何を書くのか。才能のこと。
名前の付け方。題の付け方。入り方終わり方。筋のこと。人称のこと。
虚構と伏線について。文章力の身につけ方。
そういうことをこと細かく
ほんとうに秘伝といえばそうなのだろうことを
いささかアイロニカルでもあるが
どれもまったく惜しげもなく披露している。

しかしそれを読むと逆にこのひとの自信のようなものが
響いてくるような気もする。
「やれるもんならやってごらんなさい」というような・・・。

スランプから回復する方法も書いてある。
「スランプに陥ると、書くもの書くものが気に入らない。
書く題材にも行き詰る。
そういう状態になると単に書くものばかりか
とかく人間関係でも好ましくない状態が相次いできて
一層書くものに悪影響を及ぼしてくる。
・・・その時はどうすればいいのか。
『努めて素直におなりなさい。拗ねてはいけません。
素直になるのが、スランプから抜け出る最短の道です』・・・」

うむむむ。そして以下の文章に出会って
なんだかほっとしたりする。


「実をいえば、よい小説の書き方が本当にわかるのは
よい小説が書けたときなのである。
・・・ところが次の作品を書こうとすると・・・
よい作品の書き方がまるでわからない。
この前までの体験が役に立たない。
当てはめようがないのだ。
文学作品の創作とはそういうものである。

・・・よい作品が書けて
よい作品の書き方が本当に分かった経験を積んでいる作家たちでも
新しい作品に取りかかろうとして
途方に暮れるのは始終あることなのである。
先月又よい作品を発表したばかりというのに
目下の次作がうまく書き始められなくて
「小説の書き方、忘れた」とつい零す人すらある。
創作体験の豊富な人ならば
あれこれを心得を沢山承知しているものの
おわゆる体験として役に立つのは
極その一部に過ぎないようなものである」


小説っていうのは、なんだか途方もない世界であるなあ、と
今更のように思い、こんな縄を編んでいる。






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Last updated  2008.01.23 17:24:58
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