こと小説に関して、いろいろ不評もあって
めげることがおおかったのだが
同人誌「停車場」を送った古い友人からの長い手紙に
なんだかいい気になっている。
なんだかなあと、言われそうだが
いい気になって、ご披露する。
「雑木林」を読んでないかたには
まるっきりわからん話なのだが
(ここいらでやめておいたほうがいいかもしれんです)
いい気になるのも才能かもしれんと思ったりもして
書き残しておくことにする。
―<雑木林>ようやく佳境に入るのでしょうか?
「ひきこみ運河」いいです。
時生さん絹子さん、これからいろんなことがあって
一波乱も二波乱もあるでしょうが
きっといい夫婦になるでしょう。
そんな予感を感じさせてくれました。
「ダンゴムシの避難訓練」
華子さん、カンさん。
作品のなかでふたりが自然に動き始めました。
作品がほんとうに作者のなかで動き始めたことがわかります。
カンさんのひとがらが徐々に浮かび上がってきましたね。
この作品の中ではカンさんの働きが時生さん絹子さんの動きより
時として作品を語らせることがあり、
わたしは作者がどんなふうにカンさんを描きつづけていくのか
以前から関心をもって見ています。
今回のカンさんもとても自然でよく描けたと思いました。
「・・・ダンゴムシの避難訓練というものが
実はいざというときに丸まらない練習かもしれないですね」
カンさんのほんとうに自然な言葉が華子さんを笑わせました。
ここのところ、うまいと思いました。
「透明ランナー」
今度は時生さんが語り手。
親よりも早く逝った幼馴染の親友の記憶。
そして親方一家との交流を通して語られる時生の生い立ち。
それぞれの人生が抱えている小さくて当たり前の
それでいて鋭く個人的な問題
決して大きな声で語られることのないだけに
しみじみと心に入ってきます。
それにしても「透明ランナー」いい題名です。
三角ベースも懐かしい。
作者はこういうエピソードの選択がほんとうにうまくなりました。
だから自然に作品のなかに入ることができます。
私の中にも透明ランナーはいましたが
やはりホームベースで憤死したのかもしれません。
いやもっと前に三本間に挟まれていたりして・・・
きっと誰にでもあるに違いない切ない思いや思い出、将来の不安
この<雑木林>という作品のなかに込められているいろいろのことが
私のなかでこもごも動き出しています。
作者の目指すものがこの辺にあるのでしょう。
その意味でますます順調にきていることは間違いありません。
これからも自信をもって書き継いでいってください」
ここに書かれていない欠点が山ほどあることは
本人が一番わかっているつもりだ。
だからこそ、この手紙が救いだった。
作品の上澄みをすっと掬って言葉にしてもらうことは
書き手にとってはなんとも心地よいものだ。
このひとは小説を書くのだが
このところ執筆が止まっている。
それはこのひとのところに
こういう手紙が届かなかったのかもしれない。
こういう手紙が
どんなふうに書くひとを鼓舞するかを知っているから
このひとはこんなふうに書いてくれるのだ。
ありがたい。
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Last updated
2008.10.04 08:26:37
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