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テーマ:今日の出来事(292674)
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今日、セカンドオピニオンを受けた病院から患者が帰ってきた。
『ただいま』 そう言って笑顔を見せた彼の笑顔は セカンドオピニオンの病院に行く前よりも晴れやかだった。 重いフィルムと1通の返事を医師に手渡し 『お願いします』と深々と頭を下げる彼に 医師は『がんばりましょう』とだけ言った。 彼は白血病の再発で再入院。 医師から骨髄移植について説明を受けていた。 彼のHLAにマッチする型は現在の骨髄移植ドナーの中では たったの5人しかいない。 彼が移植を決意したならば、その5人のドナーに移植についての 打診が行われることになるのだが、 ほとんどのドナーは 自分が選ばれることに驚き、 仕事の都合や前処置の危険性から家族の反対などにより ドナー登録をしているにもかかわらず断られたりすることが多い。 たった5人に断られたならば 彼の残された手段は 60歳を過ぎた母親や 兄からのミスマッチ移植しかない。 たとえオールマッチのドナーから移植を受けたとしても あまりにも進行の早い彼の病状から考えて 成功率はわずか20%だという。 セカンドオピニオンからも移植が妥当な治療手段であるという回答をもらって帰ってきた彼にとって すがるものはもうそれしか残されていない。 あとはこのまま抗がん剤の治療を細々と続けて命を繋ぐことだけだ。 そんな少しの選択肢の中で彼は移植の道を選んだ。 今まで何度となく入退院を繰り返したうちの病院で 同じ病気で亡くなる患者たちを目の当たりにしての決断だった。 帰ってきた彼の病室を訪ねると 彼はわたしに 『今度は長くかかるけど頼むよ』と笑った。 わたしは彼と握手をして『わたしが担当です。こちらこそ宜しく!』と言った。 これから彼と病気と医療スタッフの新たな闘いが始まる。 ここ数日で 移植した患者が3人退院した。 もちろん『再発』という爆弾を抱えての帰宅である。 いつ芽を吹き出すかわからない種を身体に持ったまま生活する不安を 患者たちは毎日わたしたちに語っていたが 『共存していく勇気』を持つことで新たな出発を心に決めて自宅に帰っていった。 そんな彼らをわたしたちスタッフは心から応援したい。 今回、移植を決意した彼の葛藤はどれほどのものか計り知れない。 しかし、わたしたちは彼の覚悟と勇気を受け止めたのだから 最高の結果を目指して立ち向かうしかないのである。 握手をしたときの彼の震える手を忘れてはならない。 骨髄移植ドナーについて気になる方はこちら。 http://www.donorsnet.jp/# お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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