■ひょっとして認知症? 【268回】 「小規模多機能型居宅介護」とは何か?
■【268回】 「小規模多機能型居宅介護」とは何か? [11/12/16]■「抗精神病薬は中止できるか」問題と定期巡回・随時対応型訪問介護看護(その8)「小規模多機能型居宅介護」っていったいどんな制度なのでしょうか。いらはら診療所の苛原実院長が著書の中で端的に解説していますのでご紹介しましょう(苛原実編著:認知症の方の在宅医療 南山堂発行, 東京, 2010, pp218-221)。-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-「小規模多機能型居宅介護は、2006年4月の介護保険改正により始まった地域密着型サービスの中に分類され、認知症などの障害が重度になっても住み慣れた地域の中で最期まで安心をして暮らしていくことを目指した介護保険サービスである。デイサービスに『通う』、ショートステイで『泊まる』、ヘルパーが『訪問する』などのサービスを、顔なじみのヘルパーによって一元的に24時間切れ目なく提供することで、認知症がある高齢者の方でも不安なく利用できるように工夫されている。…(中略)… 本制度の原型は、1980年代からさまざまな地域で高い志を持ったボランティアの方が始めた宅老所である。自宅を開放する形で始め,デイサービスから、利用者の具合の悪いときにはそのまま泊めて様子をみたり、自宅を訪問して介護をしたりしていた。さらには、そのまま住み込む方も出てきた。…(中略)…この制度が始まって数年経過したが、普及はいまだ不十分であり、利用率もそれほど高くない。制度に対する認知度が高くないことと、包括的なサービスであるにもかかわらず、モデルの宅老所にはあった『住む』という機能が組み込まれていないことなどが原因として考えられる。」 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- ◇ ◇小規模多機能型居宅介護におけるショートステイ機能の活用を期待する動きが今後加速していくのかも知れませんね。厚生労働省老健局認知症・虐待防止対策推進室の千葉登志雄前室長のビジョンを最後にご紹介して本稿を閉じたいと思います。-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-「例えば、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;認知症に伴う行動障害と精神症状)を生じて入院した後に軽快して退院可能となっても、支援なしで自宅生活を送れるとはかぎらない。こうした場合、例えば小規模多機能型居宅介護を活用して、はじめは泊まり機能を活用して地域に受け入れ、次第に訪問・通いサービスにシフトさせることなどが考えられる。医療から介護に、継ぎ目なしにつなげていくことは重要である。」(千葉登志雄:我が国における認知症対策. 日本臨床 Vol.69, Suppl 8, 29-33 2011) -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-(このシリーズ、終わり)出典:[アスパラクラブ:ひょっとして認知症?]笠間 睦 (かさま・あつし)プロフィール 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックと関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務、診療情報部長を務める。認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成--こうした「全国初の業績」を3つ持つという。 趣味はテニス。お酒も大好き。お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば・・・と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。 ■マイQ盤ジャケット ■賢人生活塾