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2012.02.18
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カテゴリ:unclassified




よい酒、悪い酒 [11/12/28]




 さて、今年もようやく終わりを迎えようとしています。本当にいろいろなことがあった年でしたね。。。。人がこの惑星で生きていくこととはどういうことなのか、ジョーンズ博士ではありませんが、おそらく多くの人が真剣に考えた、日本史上大きなターニングポイントとなる年だったのではないでしょうか。

 私も単純なアタマでいろいろと考えたし、今も考え続けております。

 で、そんな年の最後に、いまの時点で日本酒について思うところを書き残しておきたいと思います。

 先日、ある蔵元と飲んでいたときのこと。

 ふだんどんな酒を飲んでいるかという話題になり、「私、外で飲むときも、ビールとか焼酎とか全く飲まなくなりました。もう乾杯から日本酒です」「悩みはちゃんとした日本酒を置いてる店が少ないことなんですよね。。。特に燗だと、メニューに『燗酒』としか書いてなくて、たいがい大手の普通種が1種類しかないんで。。。」「それでも、最近冷酒が苦手になっちゃったんで、そのおいしくない燗酒を頼むしかないんですよ・・」と告白。

 まあ告白ってほどのこともないですね。。。でも相手は日本酒の蔵元ですから、これだけ素人ながらに日本酒の消費に貢献してると知っていただければ、ちょっとは感激してもらえるかな~、誉めてもらえるかな~なんて思ったりしたのは事実です。

 ところがっ・・・。

 「稲垣さん、それはダメですよ!」。なんと、蔵元から強烈なダメ出しが。。。。

 蔵元。「日本酒には、いい日本酒と、悪い日本酒があるんですよ」 「そんな悪い日本酒をいくら飲んだって、全然、業界のためになりません。むしろ悪影響を与えますよ!」 「ちゃんといい日本酒だけを選んで飲まなきゃダメですよ!」

 私。「いや、、、もちろんいいお酒があればそれを飲むんですけど、全く選択肢のない店が多いんですよ。。。」「たとえ悪い日本酒でも、これだけ日本酒離れが進んでいるなかで、一人でも日本酒を注文する客がいたら、お店の側もちょっとでも日本酒に興味を持ってくれるんじゃないかと思うんです」「その結果、お店の人がいい日本酒のおいしさに目覚めて、そういうお酒を店で置いてくれるっていうこともあるんじゃないかと。。」「・・・ダメですかね?」

 蔵元。「ダメです!」「ダメな酒の消費が増えることなんて何の意味もないです! いい酒がちゃんと売れていくことには絶対つながりません!」

 まあ、お互い相当酔っぱらってましたから細部は正確ではありませんが、おおむねこんな会話が展開されたのでした。

 確かに、現在すばらしい日本酒を造り続けている小さな蔵の多くが、本当にかつかつの経営を続けていす。酒蔵はルーツをたどれば庄屋さんなど土地の名士であることが多いので、先祖代々の財産を取り崩しながらなんとか持ちこたえてくださっていますが、このまま「よい日本酒」が正当な評価を受けない状況が続けば、いったいいつまで持ちこたえられるのだろうかと絶望的な気持ちになることが少なくありません。そんな中で「よい日本酒」をがんばって造っておられる蔵元の「悪い酒は飲むな!」という叫びだっただけに、とても酒の席の戯れ言と笑って済ませることはできませんでした。

 というわけで、この会話をした後、とりあえず蔵元の言うとおりにしてみよう、日本酒だからといって何でも飲むのでなく、「悪い日本酒」しかなければワインでも焼酎でもいいから「いい酒」を選んで飲むことにしよう・・・と思ったのでした。

ところがそこで、ハタと考え込んでしまったのです。

「よい酒」と「悪い酒」って、いったいどこに分かれ目があるんだろうか。

 値段が高いのが「よい酒」ってわけでもない。また大手の酒だから「悪い」とも決めつけられない気もします。手造りかどうかといっても、もともと酒造りにはいろいろな道具を使うわけで、それこそ線引きは難しい。無添加かどうかという基準もありますが、糖類など入れてる酒は論外として、味の調整のために少量の醸造アルコールを添加することを絶対に認めないかどうかは、日本酒ファンの中でも意見が分かれているところです。

 ここで、ついつい「好み」ということばを出したい誘惑にかられますが、つい先日のブログで書いたとおり、すべての議論を断ち切ってしまいかねないこの魔法の言葉はあんまり使いたくないんですよね。。。

 そんなとき、ある文章を読んでハッとしたのです。

 愛読している「暮らしの手帖」(55号)の特集「日本のかご」のなかに、その文章がありました。長くなりますが、これを紹介して、今年のしめくくりとしたいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 素材の種類の豊富さと、多様なかたちこそ、日本のかごの大きな特徴だろう。それは、地域の風土と向き合い、使いながら、人々の生活に役立つように試行錯誤を繰り返した結果、かたちの一つひとつに小さな暮らしが表れたためだ。ときには行商人や旅人から伝え聞いた、他の土地の文化や技術と結びつきながら、かたちや編み方に改良を重ねていき、ゆたかな造形につながっていった。

 いま町で目にするかごの数はとても多いが、こうした地域性は薄れてきている。その背景には、手仕事で手間ひまかかるわりに実入りが少ないために、地域に根ざしたかごづくりを生業とする職人が減ってきていることがある。また、気候の大きな変化で、国内で素材を集めるのが難しくなっていることもある。

 その一方で、海外などから素材を取り寄せて、趣味的に取り組む人は増えている。なかには器用な人もいて、工芸作家のように奇をてらっていたり、つくり手自身を誇示するかのようなかごをつくる人もいる。

 そのなかで、よいかごを選ぶために大切なこととはなにか。

 それは、そのかごを手にしたとき、一人の人間が、どれだけ一人の人を思ってつくったものであるかを感じることができるかどうかである。

 本来かごは、思いつきや、よく見せようとして、生まれてきた道具ではない。たとえそれが一見いびつであっても、どうしたら使いやすくなるだろうかと、つくる人が使う人や用途のことを深く思いやり、その地域の文化、風土、そして暮らしのなかで培われた知恵や工夫を凝らしていれば、おのずと機能美として表れるはずである。

 つい、奇をてらったものや装飾的なものばかりに目を奪われてしまいがちだが、長年、人間の知恵と工夫と愛情ではぐくまれたかごには、かたちや装飾に無駄がない。だから、昔といまでは暮らしぶりが大きく変わったけれど、かたちを代えなくても十分に使うことができるだけの機能美が備わっている。

 それこそが本当によいかごといえるのではないだろうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この「かご」を「日本酒」に置き換えたとき、私、ものすごくストンと落ちたのです。

 日本酒ほど、造り手の思いがストレートに表れる飲み物はない・・というのが、今の私の実感です。売らんかなと造られた酒はそういうスケベ心が透けてみえるし、飲み手に土地の滋味を届けたいと愚直に作られた酒は、その心が伝わってきます。そんなピュアな造り手を感じ取れる酒こそが、私にとっての「よい酒」です。

 造り手の「思い」を感じ取れる飲み手であるために、これからも精進しようと思います。
 
 みなさま、よいお年を。


 ■今年最後のおまけ

 今年のクリスマスはなんと、マイ日本酒の聖地、鳥取は米子で迎えました。




 鳥取へ向かう特急列車の窓の外は、どんどん雪景色に。ホワイトクリスマスだよ!




 米子の名店「桔梗屋」さんで開かれた燗酒の会に誘っていただいたのでした。私の好きな銘柄のお酒ばっかりです。

 いつもお世話になっている山枡酒店さんにお誘いいただき、かなり強引に来てしまいました! 鳥取のお燗好きの面々と、初対面なのにめっちゃ楽しく酔っぱらわせていただきました。日本酒好きの人に悪い人はいない!と、改めて実感。

 翌日は、せっかくここまで来たんだからと・・・・

 ←憧れのねずみ男列車に乗り・・・・

 ←やってきました水木しげるロード! 尊敬するねずみ男も正月バージョンの飾り付け。なまけているんだけど晴れがましい。いいな~。

日本酒が私をここまで連れてきた!と思うと、胸がいっぱいな年末となりました♪














稲垣 えみ子(いながき・えみこ)プロフィール


1987年に朝日新聞記者となり、社会部、週刊朝日編集部、大阪版編集長などを経て、2010年4月から地域ニュースディレクター。プライベートではヨガインストラクターの資格を持つ健康マニアで、生ゴミ堆肥によるベランダ菜園と、裏山(六甲山)登山が趣味。











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最終更新日  2012.02.18 16:22:52
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