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2012.02.23
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カテゴリ:健康・病気




■【289回】 ジェネリックに不安を持つ理由とは? [12/01/06]





■ジェネリック医薬品(その3)

国際医療福祉大学大学院の武藤正樹教授は、医師がGEに不安を持つ理由として、GEのデータや情報が少ないという指摘があることに触れて、「1980年まではジェネリック医薬品と先発品が同じ血中移行を示すかどうかを確かめる生物学的同等性試験は、動物で行われていた。それを80年以降、ヒト試験に変えた。また同じ時期、それまで義務づけられていなかった長期・過酷条件下の保存を行う安定性試験もジェネリック医薬品に義務づけられた。さらに1997年からは、溶出試験といって試験液中での製剤からの薬物の溶け出す速度や量が同じかどうかを確かめる試験もジェネリック医薬品の承認申請で義務づけられた。」という経緯を紹介し、ジェネリック医薬品の品質保証の仕組みが一段と向上している現状を報告しています(武藤正樹:医師が抱える不安材料とその解決に向けての方策. 薬局 Vol.62 54-57 2011)。

生物学的同等性試験とは、ジェネリック医薬品が先発医薬品と同等の臨床効果を示すことを担保するために、両者間でヒトに投与した場合の血中濃度を比較する試験です。同等性の判定基準に関しては、国立医薬品食品衛生研究所のウェブサイトにおいても記載されておりますが、国立医薬品食品衛生研究所薬品部の四方田千佳子薬品部第一室長が論文において解説されておりますので、一部改変して以下にご紹介します(四方田千佳子:なぜヒトの臨床試験は必要ないの? 薬局 Vol.62 62 2011)。

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「後発医薬品(ジェネリック医薬品:GE)の製造販売承認に当たって、必要とされる資料は、製剤の品質規格、安定性試験(加速試験)、生物学的同等性に関する資料であり、新薬の申請時に較べて、毒性試験や、臨床試験成績の資料などは必要とされない。これは、有効成分が同じであれば、基本的な薬理作用や、有効性、毒性には差がないということを前提としているためである。他方、GEでは、有効成分の量は同じであっても、製剤化に必要な医薬品添加剤の種類や量などを定める処方設計や製剤の製造方法などはそれぞれの後発品で異なるため、医薬品製剤の作用が同等であることを評価するためのデータを要求するという考えに基づいている。

生物学的同等性試験の試験結果を解析するために、最大血中濃度(Cmax)と血中濃度曲線下面積(AUC)を比較する。この両者に統計的な差が認められなければ効果も同じで、GEは先発品と同等であると判断される。同等性の判定は、GEと先発品のそれぞれについて、AUCとCmaxを対数値としてから平均値を計算し、その差の90%信頼区間(個々の測定値のばらつきを考慮したときに、差の値が90%の確率で含まれると推定される範囲)が、log(0.80)~log(1.25)の範囲にあるとき同等とすることによる。」
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皆さん上記の文面読み終えていかがですか?

残念ながら私にはこの文面を解説する能力がありません。特に、「その差の90%信頼区間(個々の測定値のばらつきを考慮したときに、差の値が90%の確率で含まれると推定される範囲)が、log(0.80)~log(1.25)の範囲にあるとき同等とする」の部分が極めて難解です。私は自分だけがバカで理解できないのかな?と不安に感じ、2011年12月25日のテニスの際にこの文面が記載されている医学雑誌を持参し、数学の得意な2人の医師に、「この意味を教えて下さい」と質問しました。2人とも首を捻っており、「この表現は分かりにくい」と話されましたのでちょっと安心しました。

明治薬科大学の緒方宏泰名誉教授は、「GEの選択は、治療に用いられる主薬の選択ではなく、主薬が選択された後の具体的な銘柄の選択である。そのため、医薬品としての品質の評価、医療スタッフ、患者が求めている製剤特性の把握が重要である。これらの視点に基づく判断は主に薬剤師の職能の1つであり、医師に求めることは酷である。」と述べています(緒方宏泰:薬剤師の「GEの使用促進へ向けたゲートキーパーの役割」に関する考察. 薬局 Vol.62 23-26 2011)。

◇    ◇


以上ご紹介してきましたように、ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等の臨床効果を示すことが担保されているのです。

ただここで注意しておかなければならないことがあります。それは医師がジェネリック医薬品(GE)の品質に不安を抱いている場合です。

草津病院の栗原正亮薬局課長は、統合失調症でもうつ病でも、医師が効くと確証して薬剤を処方すると効くが、不安を抱いて薬剤を処方すると驚くくらい効かないという談話を紹介し、「精神科薬物療法は、その薬剤が本来もつ薬理効果とプラセボ効果を合算したものとして成り立っている」と指摘しています(栗原正亮:調剤薬変更がコンプライアンスへ及ぼす影響を考慮する-精神科領域を例に. 薬局 Vol.62 100-103 2011)。

ですから病識がある程度保たれている認知症患者さんに対してジェネリック医薬品を処方する際には、「品質は生物学的同等性試験において確認済みです」と自信を持って説明することが求められるのかも知れませんね。

(つづく)














笠間 睦 (かさま・あつし)プロフィール




 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックと関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務、診療情報部長を務める。認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成--こうした「全国初の業績」を3つ持つという。
 趣味はテニス。お酒も大好き。お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば・・・と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。









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最終更新日  2012.02.23 11:23:56
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