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2012.05.31
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カテゴリ:健康・病気



■【386回】 非言語コミュニケーションの重要性 [12/04/22]





■言葉がなくても意思は通じる (その5)

最後に、重度認知症患者さんとのコミュニケーションにおいては、ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)が大切であるというお話をご紹介致します。

弘遠会・天竜すずかけ病院の水野紀美子認知症ケア病棟課長は、重度認知症患者K氏の事例を紹介しています(水野紀美子:認知症患者の事例から考えるコミュニケーションスキル. 看護実践の科学 Vol.37 13-18 2012)。

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「入院患者が眠りに就いた22時過ぎ、病室から何か訴えるK氏の声が聞こえ職員はベッドサイドにかけつけた。以前より尿意を訴えて声を上げることが多かったので、いつも通り排尿介助をしたが納得できない様子であった。『う・う・△・□…』と不明瞭な言葉は何を訴えているのか直ぐには理解できずどう対応して良いのか戸惑っている間もK氏の声は強く、大きく、トーンは増すばかりであった。思いつくままに質問や確認の言葉をかけたが効を奏するどころか益々『なぜわかってくれない』と言わんばかりの怒りといらだちが伝わってきた。何とか対応しなければと職員の気持ちは焦るばかりであった。そんな中で何とか聞き取れた言葉は『う・る・さ・い』だった。

周囲を見渡しても他の患者は寝静まっており、K氏がうるさいと思う理由が見当たらず、困り果て、じっと見ていると、不自由になっている足で布団を蹴ろうとする様子に気づいた。もしかしたら『布団を何とかしてほしいのではないか』と思い、上半身のふとんを下げ、足元を整えると、K氏の表情は穏やかになり眠りについた。

これは患者の訴えが理解でき、その訴えに対応できたことで睡眠がとれた事例である。おおかたの人は『うるさい』の意味は騒がしいと解釈するのではないか。ところがK氏の育った地域では『うるさい』とは邪魔という意味として通用してきたことを後に妻からの情報として知ることができた。K氏が認知症になる前から長年培ってきた生活の中で当たり前に使ってきた言葉だったのである。」(一部改変)
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こうしてK氏の言語記録をつけて分析してみると、言葉は10種類程度であり、排泄・食事・休息など生理的な欲求に関するものがほとんどであったそうです。不明瞭な言葉であっても、言葉の意味を予測しある程度承知して関わることで、K氏とのコミュニケーションはスムーズになったそうです。

解析できたK氏の言葉と意味の代表例を、以下に対比してご紹介します。






K氏の言葉意味
うるさい 邪魔
手を出いてやー テーブルの上に手を出して欲しい
ねぬくいー 職員がそばにきて欲しい
体を片づけてやー ベッドに寝かせて欲しい
しょん しょん 尿意の訴えの時


水野紀美子認知症ケア病棟課長は、以下のように結んでいます。

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「言葉の意味を理解し説明することが困難になっている認知症患者は、矢継ぎ早の質問には答えられず自尊心が傷つきやすくなる。この不快な感情がきっかけとなって、さらにいらだち、大声になっていく。

重度認知症患者とのコミュニケーションにおいて、まず表情、アイコンタクト、身振り、手振り、仕草など、体全体から発するメッセージを通してどうしたいのであろうか、何を訴えたいのかを読み取り察する非言語のコミュニケーションが効果的であると言える。患者個々に言葉以外のサインがあり毎日の仕草やテンポを見ていれば理解が可能である。」
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(このシリーズ、終わり)














笠間 睦 (かさま・あつし)プロフィール




 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックと関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務、診療情報部長を務める。認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成--こうした「全国初の業績」を3つ持つという。
 趣味はテニス。お酒も大好き。お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば・・・と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。









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最終更新日  2012.06.08 05:04:27
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