なまず的日常見聞録

2022/07/04(月)09:26

ナギーサにて

TV(783)

“愛のナギーサ”だそうである。CS日本映画専門チャンネルで放送の大島渚生誕90年記念特集で、レアなテレビドキュメンタリー2本が放送。30分の2本を続けて録画視聴。 まずは日本テレビで放送の「すばらしい世界旅行」“南アフリカの旅 黒人国家誕生”'66(カラー画質良)。南アフリカ領土内のイギリス領だったレソト王国の独立の日を追った記録。レソトは、元々はバストランドという名称だった。南アの内陸国だが黒人ばかりのようだ。カトリック教徒が大半を占め、独立の祭典では洋風のパレードも行われる。独立式典はイギリス皇太子妃も出席して滞りなく行われる。沖縄と同様に、それまでは高等弁務官がトップに君臨していたが、国王モショエショエ2世が立憲君主となった。 バストハットという麦わら帽子が国の象徴であり、国王も式典で、その帽子をかぶっていた。国旗にも帽子が描かれている。レソトは、その後も色々波乱があったようだけれど、この田舎町の祭りのような独立式典でも、喜びと高揚は伝わってきた。但し、少し郊外に出れば、そこには女たちがいつも通りに働いている。独立したからといって、特に生活が変わるわけでもない。受け継がれてきた日々は、これからも脈々と続いていく、という締めだ。ナレーションは久米明の担当。 もう1本は更に大島らしい題材で、大分県筑後川に設けられた下筌ダムの反対闘争を巡る、“蜂の巣城紛争”を記録した「ノンフィクション劇場 反骨の砦」'64(モノクロ)だ。水害対策として着手された下筌ダムだったが、多くの家屋が水没するということで、その説明が不充分として、室原知幸らが立ち上がる。工事が行われる対岸に、まさに蜂の巣のような小屋が斜面に築かれ、反対する市民たちが寝ずの番をおこなっていたようだ。 30分枠なので、その蜂の巣城が撤去される運動の終盤に焦点が絞られている。公権力による強制排除の様子は、あの高江のヘリパッド建設のための、反対拠点の排除を思い起こさせた。大分出身の滝廉太郎による“荒城の月”が悲しく流れる、運動の終焉の様子なのだが、撤去されて後も、室原らは運動の継続を訴え、室原の死後も続いたという。ダム建設の是非というのは、今尚、度々、俎上に上がる命題だ。あの、「忘れられた皇軍」程の、ストレートな強烈さではないものの、大島らしい視点とスタンスで、当時の日本の現実が切り取られていた。こちらのナレーターは徳川夢声だった。

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