2007/07/01(日)12:08
乃南アサ「二十四時間」読了
乃南アサ「二十四時間」読了。
一日を構成する二十四時間、それぞれの時間帯で起こった
二十四の短篇集。
主人公は「私」で、基本的に一話完結ですが、通して読むと
「私」は同一人物で、自身の体験を語っていることが判って
きます。
東京郊外で育ち、私立中高一貫校を卒業後大学に進学するが
中退。広告代理店勤務を経て作家になった…つまり乃南アサ
の私小説と思われます。
誰にでもありそうな思い出を時間に結び付けて語っていく
手法が面白いと思いました。
中でも一番共感し、涙したのが「十五時」
***
「私」が作家になりかけの一番あわただしい頃に実家の愛犬が
老衰で死亡。死に目に会うことが出来ませんでした。
少し前から「私」の目にも老化が著しかった愛犬「くま」。
「私」は実家に帰るたびに
「今日がお別れかもしれないけど、またきっと、生まれかわって
きて。そうしたら、今度は死ぬまで一緒に暮らせるようにしようね」
「今度こそお別れかもしれない。どうか苦しまないで。大丈夫、
きっとまた会えるからね」
と話しかけていたのです。白内障で目が見えなくなり、
耳も遠くなっていた くま に向かって。
それからしばらくしたある日、アパートに帰ってきて
鍵を開けている「私」のもとに一匹の子猫が駆け寄ってきて
はっし!とジーンズに飛びつきしがみついてきました。
「そっくす」と名づけたその猫が…
***
泣きました。
私も実家に「小太郎」という、愛想のいい誰にでも好かれる
だけど駄犬を置いてきていたのです。
その子は3年前に17歳で天寿を全うしましたが
最後の半年ぐらいは、まったく「くま」と同じでしたから。
そして、おととし、生後半年で「自己免疫性血小板損傷」という
白血病に似た病気で天に召された 白い子猫のテン。
私もテンに何度も何度も話しかけたものです。
「必ず見つけ出すから、生まれかわってきてね。
今度は健康に生まれて来るんだよ。また会おうね」と。
その後我が家にはモンプチと言う子猫がやってきましたが
残念ながらテンの生まれかわりだとは思えません。
乃南アサ「十五時」を読んだら、もう一度生まれかわりを
信じたいと思えました。
愛しかった犬や猫(もちろん人間も)ともう一度どこかで
会えるのだとしたら、それはどんなに嬉しいことでしょう。
あー、これを入力していても泣けてくる。
このあと法事に出かけないといけないって言うのに
鼻水ずるずるだぁ。