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ブルー・ガーディニア
アン・バクスター、彼女の出演作品で群を抜く映画は「イブの総て」だと思う。毎晩のように楽屋の出入り口でスターのマーゴを待つ田舎娘が、マーゴに接近し、劇評家や演出家に媚を売り、スターを蹴落とす女優に変身していくさまを巧妙に演じた彼女の小悪魔的な愛らしさは鮮烈だった。 イヴの総て この作品はまさに彼女の”総て”だったのではないだろうか。女の持ついやらしさ、ずる賢さをいやというほど見せてくれた映画は他にそうあるものではないと思う。 圧巻だったのはスターに成り上ったイブの楽屋へこっそり入りこむ2代目イブの出現だろうか。デヴュー間もないマリリン・モンローが実にういういしかったのを覚えている。 彼女は1923年5月7日、インディアナ州ミシガンシティで生まれた。祖父は建築家のフランク・ロイド・ライト。この人は帝国ホテル旧館の設計者で、彼女はライトの孫娘だ。アンは裕福な家庭に生まれたこともあって、10歳でヘレン・ヘイズの舞台を見て女優になることを決意し、11歳の時にニューヨーク市ブロンクスヴィルに移った。 セオドラ・アーヴィン演劇学校でロシア出身の女優マリア・アウスペンスカヤに師事し演技の勉強をする。13歳の頃にはブロードウェイの舞台でデビューし、1940年には17歳で20世紀フォックスと契約し映画でもデビューを飾る。なおデビュー作の「20 Mule Team」は「レベッカ」のスクリーンテストを受けた結果、代わりに割り振られた役だった。 1941年の「スワンプ・ウォーター」、1942年の「偉大なるアンバーソン家の人々」での演技が高く評価され、ついに1946年の「剃刀の刃」でアルコール中毒症の娘を演じてアカデミー助演女優賞を受賞した。 剃刀の刃 更に1950年の「イヴの総て」では、ベティ・デイヴィス演じる大女優マーゴ・チャニングを踏み台にのし上がる新人女優イヴ・ハリントンを演じて名実共に彼女の代表作となった。 この作品では共演したベティ・デイヴィスと共にアカデミー主演女優賞にノミネートされたが惜しくも賞を逃した。その後はセシル・B・デミルの超大作「十戒」でエジプトの王女を演じているが、1960年代以降は舞台やテレビ出演が多くなった。他に見るべき作品としては「私は告白する」「廃墟の群盗」などがある。 1971年にローレン・バコールの後を受けて、「イヴの総て」の舞台版『Applause』で今度はマーゴ役を演じ、思い出に自ら華を添えたのである。 私生活では結婚が3度。2度目の結婚の際、オーストラリアの牧場主である夫に付き添って、1961年から数年間オーストラリアのキャトル・ステーションに生活の拠点を移した。 1973年に『刑事コロンボ』シリーズの『偶像のレクイエム』で今はテレビしか活躍していないかつての大女優役という、実生活さながらの犯人を演じる。1976年には自伝を発表し、批評家から絶賛された。 そして、1985年12月12日、享年62歳の若さで、心臓発作のためにニューヨークで死去した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.01.19 21:18:56
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