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アンナ・マニャーニ、彼女の名はこの1場面で映画史に永遠の光を放つに違いない。1950年(昭和25年)に封切られたイタリアン・ネオリアリズモの傑作「無防備都市」の1シーンである。
無防備都市 ロベルト・ロッセリーニ監督のこの作品、レジスタンスの指導者や、それを支持する神父、そして彼等に関わった人々の悲惨な末路が冷徹な目で描かれる。 地下運動家の妻(マニャーニ)が、車に乗せられ連行される夫の後を追いかける。夫の名を叫びながら、執拗に追いかける。車と彼女の間隔は広がる。だが、彼女は決して諦めない。必死に手を伸ばして絶叫するのだ。 次の瞬間、「ダダダ・・・」と走る車から機銃が発射される。路上につんのめるように倒れる妻、手を伸ばした状態のまま、コト切れる。 ファシズムへの痛烈な批判がこのカットから読み取れる。まさに名作だ。 彼女は1908年3月7日、イタリアのローマで生まれた。父はエジプト人。15歳から大衆演芸の舞台に立つ。 1934年映画デビュー。彫りが深い顔立ち、線の太いいかにも「イタリア女」の風貌で、ロッセリーニ、ルノワール、ヴィスコンティらの作品に出演。特にロッセリーニの「無防備都市」では、鮮烈な印象を残した。 1955年の「バラの刺青」でアカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞 主演女優賞 (ドラマ部門)を受賞。 出演作品はさして多くはないが、良品が多い。「アモーレ」「黄金の馬車」「ベリッシマ」「蛇皮の服を着た男」「われら女性」などがある。 晩年に「ふたりの女」の出演以来がきたとき、マニャーニは母親役をよしとせず蹴ったところ、代役はソフィア・ローレンになり、ローレンはその演技でアカデミー主演女優賞を獲得した。 そのため、「私の役はみんなソフィアが持っていってしまう。」と、後輩の活躍をうらやんだという。 第二次世界大戦中、ムッソリーニ失脚後、北イタリアはドイツ軍に占領され、ドイツ軍は占領軍使用のため、市民の自動車を徴発した。 自動車を取られたマニャーニは怒って、農家の使う大八車を持ち出し、ドイツ兵に怒鳴りながら、ヴィア・デル・コルソなどの目抜き通りを突っ走ったという逸話の持主だ。 彼女は1973年9月26日、まだ若い65歳で天国に呼ばれた。結婚は1回だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.14 13:39:35
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