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吟遊映人 【創作室 Y】

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2008.10.16
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カテゴリ:映画/ラブ
「あなたと自分に腹が立って(あんなことをしてしまったの)。あなたが医学校に行けば気が晴れると・・・自分の気持ちが分からずに・・・(私は)本当にバカね。何の話か分かるわね? 先に気づいたのはあなた。」
「なぜ泣いてる?」
「分かるでしょ?」
「ああ、分かる。」

久しぶりに上質な映画と出会えた気がする。
この作品は英国の作家イアン・マキューアンのベストセラー小説「贖罪」が原作となっている。
13歳の少女の潔癖性と嫉妬が生んだ嘘によって、純愛を育む男女の悲劇を描いたものだ。

主人公のブライオニーは、作家を目指す聡明な少女だ。
彼女の紡ぐ言葉はタイプライターのカチカチというリズミカルな音に伴って物語となり、表現される。
しかし、タイプライターによって一度紙面に刻まれた文字は消えることはない。
虚飾の世界が現実となってそこに存在するのだ。
思春期に直面する少女が抱く淡い恋心が、やがて嫉妬に変わり、垣間見る大人の世界、性への恐れが彼女を狂わせてしまう。
この少女ブライオニーが、作家を夢見て日夜タイプライターに言葉を紡ぐという設定はすばらしい。
そんな彼女だからこそ、背負った罪の重さは計り知れず、生涯をかけてつぐなうというエンディングでまとめられているのだ。

1930年代、忍び寄る戦争の影、夏のイングランドにおいて、上流階級の令嬢セシーリアは使用人の息子ロビーと惹かれ合っていた。
ロビーは学業優秀で、セシーリアの父親の援助によってケンブリッジ大学の医学部へと進学が決まっていた。
一方、セシーリアの妹ブライオニーは、ロビーに対して淡い恋心を抱いている。
だがロビーとセシーリアのただならぬ関係を察知し、ロビーに対して警戒心を抱くようになる。
そしてある夜、事件は起きた。

切なさを誘うほどの広々とした草原。
バロック調の建物、レコードから聴こえる優雅なオペラ、ミツバチの羽音。
文学性の高い演出、映像美、脚本、全てにおいてすばらしかった。
また、引き裂かれた二人の痛みを伴うほどの恋愛と苦悩は、ジェームズ・マカヴォイとキーラ・ナイトレイの二人の役者によって最高に格調高いドラマに仕上げられていた。

2007年(英)、2008年(日)公開
【監督】ジョー・ライト
【出演】ジェームズ・マカヴォイ、キーラ・ナイトレイ

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.10.16 06:13:28
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