2010/09/25(土)08:03
ウルフマン
「お前は母親の死に深く傷ついた。母親のあんな姿を見れば無理もない。あの夜、お前が私たちを見さえしなければ・・・私の言うことを信じてくれ。私はお前の母親を心から愛していた。彼女と共に私も死んだ。今でも夜、城をさまよい、彼女を捜している」
邦訳するとそのまま“狼男”となるわけだが、この手の作品は欧米諸国に限らず、日本においても魅了される題材かもしれない。
例えば日本においては、河童や座敷童、雪女などの妖怪、あやかしの伝承が数多く残っていて、いつまで経っても眠りに就かない幼い子どもたちのための寝物語として愛されて来た。(もちろん、もっとおどろおどろしい部分を秘めているものもあることは確かだが)
ところが西欧の狼男や魔女などはもっと切実で、そのルーツは宗教が絡んで来るので根が深い。
昔は今ほど精神医学が発達していないため、知能障害を患った人物が月に向かって絶叫したり、精神錯乱を起こしたりすると、それはすぐさま天罰とされたり、あるいは悪魔の呪いとされてしまった。【ウィキペディア参照】
こうしたところから物語は膨らみを帯び、人が満月の夜に獣に変身するという発想が生まれたのかもしれない。
1800年代後半のイギリスが舞台。
芝居の巡業中の合い間に、役者であるローレンス・タルボットのもとへ、故郷ブラック・ムーアから客人が来る。
それはローレンスの弟ベンのフィアンセであるグエンであった。
グエンが言うには、ベンがずっと行方不明で何か手掛かりが欲しい、ベンの行方について心当たりはないかとのことだった。
ローレンスは巡業中という立場もあったが、それより何より、忌わしい過去に囚われ故郷を半分捨てたような形であったため、本来なら弟のことなど放っておきたかったが、情にほだされローレンスはブラック・ムーアへ帰郷するのだった。
本作では準主役のような立ち位置にある、アンソニー・ホプキンスに注目した。
やはりこの役者さんの存在感と言ったら並々ならぬものを感じてしまう。
英国人俳優ということもあってか(つまり、舞台における役者としての起源を持っているということ)、アンソニー・ホプキンスは台本を重要視する。
そのため、何度も何度も繰り返し台本を読み込むことで役柄を体得していくという形態を取っている。
これは、表面的なスタイルから入っていくロバート・デ・ニーロとは対極にある演技で、その辺りも注目してみる価値がありそうだ。
「ウルフマン」は、中秋の名月には持って来いの西欧ファンタジーなのだ。
2010年公開
【監督】ジョージ・ジョンストン
【出演】ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス
また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)