2011/06/22(水)22:28
ウォール・ストリート
『“狂気”の定義とは? 違う結果を求めつつ、同じことを繰り返すこと。誰もが犯す過ちだが、同時には犯さない。それが救いと言える。我々がもし集団で同時に狂気に走ったらどうなる? ゴードンの言った、世の中全体を巻き込む“癌”だ』
本作は言わずと知れた1987年の「ウォール街」の続編である。
だが、「ウォール街」を観ておられない方々でも、本作「ウォール・ストリート」は違和感なく鑑賞することが出来る。
その辺は、さすが社会派オリバー・ストーン監督の手掛けた作品のことだけはある。
さすがだなと思ったのは、幼い子どもが何気なく楽しむシャボン玉(バブル)のシーンで始まり、シャボン玉(バブル)で終わる演出。
いやはやお見事。
さらには「ウォール街」の主役チャーリー・シーンが、バド・フォックスのその後としてチョイ出演。
嬉しいオマケではないか。
アメリカというお国柄でもなかろうが、キリスト教で言う父(神)と子(イエス)の関係が重視される。
そのため、ありとあらゆる作品のテーマに親子、それもとりわけ父と息子を扱ったものが多いのも確かだ。
本作においても、主人公ゴードン(父)とジェイコブ(婿)の関係がクローズ・アップされている。
ニューヨークのゼイベル社で証券マンとして働くジェイコブは、ウィニーという知的でキュートな女性と交際していた。
だがウィニーの父というのは、かつてインサイダー取引の罪で投獄さていた人物だった。
そのゴードンが8年の服役を終え出所。
ジェイコブは興味本意でゴードンの講演会に出向く。
そんな中、ゼイベル社の株が暴落。
ジェイコブにとっては人生の師であり社長でもあるルウが、失意の中、地下鉄の電車に轢かれ自殺。
ジェイコブは、ゼイベル社の風評を流した業界の黒幕とも言えるブレトンに対し、復讐を誓うのだった。
オリバー・ストーン監督お得意とも言える痛烈な皮肉と因果応報というテーマは、いつの時代でも納得せずにはいられない。
一部の、金を持て余した投資家たちによって、世界経済が右にも左にも転ぶのだとしたら、我々一般庶民はただ指をくわえて見ているしかないのだ。
だが、幸か不幸か金は一つ所にとどまらない。
いつも生き生きと、自在に動いているのを好むらしい。
昨日の金持ちは今日のホームレス。
世の中何があるか分からない。
生きることは、ある意味ギャンブルなのかもしれない。
さて、「ウォール・ストリート」は父と娘の物語でもある。
父の生き方を否定し、過去を許すことの出来ない娘ウィニー役に扮するのは、英国人女優キャリー・マリガンだが、見事な演技力だ。
正直なところ、ジェイコブ役のシャイア・ラブーフを完全に食ってしまったようなところも見受けられ、後半は父と娘の物語へと移行していた。
今後の活躍が楽しみな、若手俳優なのだ。
主役のマイケル・ダグラスは、良い意味で枯れた。
これこそ正に“いぶし銀”という味わいかもしれない。
「ウォール街」の時より、数段の深みと厚みを増した演技に完成されていた。
興味のある方は、1987年の「ウォール街」も併せてご覧になると、より一層本作を楽しむことが出来るかもしれない。
2010年(米)、2011年(日)公開
【監督】オリバー・ストーン
【出演】マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ
また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)