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カテゴリ:映画/ラブ
【日の名残り】
![]() 「電気がつくと、いつもこの騒ぎなの」 「なぜです?」 「夕暮れが一日で一番いい時間だと言いますわ。皆この時間を楽しみに待つのだとか」 「なるほど」 あけましておめでとうございます。本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。 新年一作目は、私の大好きなジェームズ・アイヴォリー監督作品より、『日の名残り』について。 この作品は、カズオ・イシグロの書いた同名小説を映画化したものだが、イギリスでは権威ある文学賞、ブッカー賞を受賞した優れた長編小説である。 カズオ・イシグロは出生地こそ日本で、両親ともに日本人なのだが、5歳ぐらいで渡英してからはずっとイギリスでの生活を送っていて、日本語もほとんどしゃべることができないそうだ。したがって国籍も成人してからイギリス国籍を取得している。 そんなカズオ・イシグロの描くイギリスは、どこか感傷的でストイックさに溢れている。日本では完全に解体された貴族社会も、イギリスではいまだ格式を重んじる内情があるとして、カズオ・イシグロは鋭いメスを入れているのだ。 英国の名門ダーリントン卿に仕える執事役にアンソニー・ホプキンス。女中頭にエマ・トンプソンが扮している。 この二人のキャスティングは見事なもので、代わりの役者さんなどとうてい考えられないぐらい様になっていた。 執事とは、上流階級の家庭において、主人の給仕をするのが職務なのだが、単なる使用人だと思ったら大間違いだ。使用人は使用人でも、上級使用人であり、男性使用人全体のリーダー格なのだ。 この重責を担う生真面目でストイックな精神の持ち主、スティーヴンス役を完全に自分のものとして表現し得たアンソニー・ホプキンスは、素晴らしい演技力の持ち主で、非の打ちどころがない。この作品では、彼の紳士然としたスマートな身のこなしを見るだけでも、損にはならない。 物語は執事スティーヴンスの視点から進められていく。第二次世界大戦前と後では、同じ屋敷にいても仕える主人が変わるため、過去を回想しながら現在を描いている。 1958年、ダーリントン・ホールは、アメリカ人富豪のルイスが所有することになった。執事のスティーヴンスは、前の持ち主ダーリントン卿の時から仕えているが、当時の使用人はほとんど去っていてスタッフが不足していた。そんなある時、かつての女中頭であったミス・ケントンから手紙が届く。彼女はすでに結婚していたが、どうやら現状はあまり上手くいっていないようで、昔を懐かしむ内容が書かれていた。スティーヴンスはさっそく彼女の元を訪ねることにした。スティーヴンスは、ひょっとしたら有能なミス・ケントンを再び迎えることができるかもしれないと思ったのだ。 この作品で注目したいのは、スティーヴンスとミス・ケントンとの淡い恋だろう。 二人は惹かれ合っていたのに、スティーヴンスはあくまで執事としての立場を全うし、またミス・ケントンも別の男性からの求婚を受け入れてしまう。これを大人の恋だと言ってしまって良いのかどうか迷うところだが、あまりにもストイックでせつなすぎる。 また、アメリカ人富豪ルイス役のクリストファー・リーヴの元気な姿がまぶしい。 年明けはやはり『日の名残り』のような、上質な映画を堪能して、自己の知識と教養の肥やしにしてはいかがだろうか? 1993年(英)、1994年(日)公開 【監督】ジェームズ・アイヴォリー 【出演】アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。 See you next time !(^^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.01.01 15:16:08
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