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テーマ:DVD映画鑑賞(14194)
カテゴリ:映画/ヒッチコック作品
【レベッカ】
「ニューヨークへ行くのと、マンダリーに行くのと、どっちがいい?」 「冗談はやめて下さい。ホッパー夫人が待ってるから、もう行かないと・・・」 「私とマンダリーに来ればいいじゃないか」 「私に秘書にでもなれとおっしゃるの?」 「結婚しよう」 様々なヒッチコック作品を楽しむ私だが、この作品のスケールの大きさには更に度肝を抜いた。“ザ・ハリウッド”と呼ぶに相応しいアメリカ映画として完成されているからだ。 『レベッカ』は、それまでイギリスを拠点に活動していたヒッチコックが、初めてハリウッドからヘッド・ハンティングされて大舞台を踏んだ作品なのだ。そのため、大掛かりなセット、美術で、すっかりハリウッドカラーに染められている。それもそのはず、プロデューサーが『風と共に去りぬ』のセルズニックということもあり、完璧なまでの構成・編集・脚本となっている。 ヒッチコックは、好きなカメラワーク、好きな女優さん、好きな演出というものを明確に持つ監督だったので、それはもうやり辛い現場だったようだ。 だが、名プロデューサーであるセルズニックのセンスに狂いはなく、アカデミー賞作品賞を受賞している。この時のヒッチコックは、あまりに素っ気ないコメントだが、「この賞はセルズニックに与えられたものだ」と述べているに過ぎない。 一方、セルズニックは、「ヒッチコックは私が信頼して映画を任せられるただ一人の監督だ」と激賞している。 『レベッカ』のストーリーはこうだ。 モンテカルロのホテルが舞台。ホッパー夫人の話し相手、兼付き人として雇われている“私”は、大富豪のマキシム・ド・ウィンターと知り合い、結婚を申し込まれる。身分違いではあったが、“私”はマキシムの愛を信じ、イギリスのマンダリーにある屋敷で暮らすことにした。 マキシムには婚歴があった。レベッカという美貌に恵まれた先妻だが、船の事故で亡くなっていたのだ。 マンダリーの屋敷には、何十人もの使用人たちがいて、その中でも先妻・レベッカ付きの女中頭・デンヴァー夫人は、ことのほか“私”を敵視している。心の支えでもあるマキシムは、どうやらレベッカのことがなかなか忘れられないのか、時折ぼんやりしたり、癇癪を起こしたり、“私”は心休まる時がない。 そんな中、近くの海岸に船が座礁したとの知らせが入る。そして、その船室からレベッカの死体が発見されたのだ。 『レベッカ』の見どころは、主人公の“私”が、先妻レベッカの圧倒的な存在感に脅え、萎縮していくプロセスだろう。誰もがレベッカの美貌と社交性を褒め称え、レベッカの使っていた部屋を在りし日のように整え、守り抜いている。枕カバーから文具品、ハンカチに至るまでレベッカの頭文字が刺繍され、当たり前のように屋敷のあちこちに先妻の名残りを感じさせられる。そんな環境に“私”はどんどん追い詰められていく。 主人公“私”を演じたジョーン・フォンテーンの迫真の演技に、思わず胸が潰れそうなほどの切なさを覚えた。 役どころとはいえ、反って、夫役のローレンシ・オリヴィエの、短気で癇癪持ちなキャラクターに一言文句をつけてやりたい気持ちになった。つまり、それほど視聴者を作品にのめり込ませるのに成功しているということだ。 ヒッチコックは、慣れないハリウッドに不自由な思いを余儀なくされたようだが、作品としては実に洗練された、大衆向けのスリラー映画として完成度の高いものに仕上げられている。 公開は1940年ということは、すでに70年もの月日が経過していることになるが、全く違和感なく、スリラー・サスペンスとして楽しめる。 本物のミステリーを味わいたいという方にお勧めの映画だ。 1940年(米)、1951年(日)公開 【監督】アルフレッド・ヒッチコック 【出演】ジョーン・フォンテーン、ローレンス・オリヴィエ コチラ コチラ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.05.05 06:09:06
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