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テーマ:コラム紹介(119)
カテゴリ:コラム紹介
【南日本新聞 南風録】
西郷隆盛といえば、かっぷくのいい大男がおおかたのイメージだろう。だが、沖永良部島 和泊町にある像は趣が違う。頬はこけ、ひげを伸ばし、やせ細った体で座禅を組む。 藩主の父島津久光の怒りをかい、流罪になった西郷をしのんで、和泊西郷南洲顕彰会が没後110年に当たる1987年、獄舎跡地に建てた。格子囲いの牢(ろう)でめい目する姿は、武人ではなく哲人の雰囲気を漂わせる。 吹きさらしの牢は海に近く、潮や砂混じりの風雨が容赦なく生身を痛めつけた。島役人の厚情に命を救われた西郷は、南の島で学問を修め、思想、人格を磨いたという。 NHK大河ドラマ「八重の桜」に登場する西郷も、今までと違ったイメージで描かれている。倒幕に向けて長州とひそかに結び、禁門の変では友軍だった会津を切り捨て、挑発を仕掛ける策士としての西郷だ。 かつてないヒール役として描かれることに、複雑な心境のファンもいるだろう。ただ、会津の視点に立てば、あながち的外れとは思えない。冷徹で知略にたけた、アンチヒーロー西郷。役者なら「新境地開拓」といったところか。 忠臣蔵の吉良上野介、安政の大獄の井伊直弼、いずれも時代劇では悪役だが、国元では誉れ高き名君と慕われている。一方からだけ当てられた光が強すぎると、見えにくくなるものがある。郷土が誇る維新の英雄が一層魅力的に思えてきた。 (6月12日付) ~~~~~~~~ 「西郷先生は、」 Yは西郷隆盛を語るとき、必ず「西郷先生」と言った。浪人下宿の三畳間には古ぼけた西郷の切抜きが貼ってあった。今から三十年前の話だ。 コラムを読んでYのことが頭に浮かんだ。生粋の薩摩隼人であるYには「八重の桜」に登場する西郷は許せないことであろう。「複雑な心境」ではすまされないはずだ。 後に鹿児島を一人旅した時、天門館で延々と西郷論を語ってくれたおじさんがいた。きっと彼もそうであろうと推察する。 かくいう私も、薩摩とは国が異なれど西郷好き暦20年、心穏やかではいられない。 だから、かの地で西郷擁護(というか主張か)の不穏な空気が流れていることを密かに期待もしているのだ(笑) 思うにコラム氏も「複雑な心境」ではないのか(笑) 行間からそう読んだのだがいかがでしょうかね。 先の大河ドラマではどこぞの知事が製作に毒づき失笑を買うという例もあり、コラム氏は筆を抑えている、そう読むのは私だけかしらん。 ところで歴史を語るとき司馬遼太郎抜きでははじまらない。 仮にも「私は歴史が好きです」という人は、司馬さんの著書の二三冊は読んでいるはずであろう。 私はここに司馬さんの真骨頂を見る。 「たとえばですよ。高杉晋作が生きて出でてきて煙草屋のカドでたまたま会ったとする。 高杉から「あなたの書いた高杉晋作は大げさすぎる」と言われても「歴史の立ち位置からみると私が書いたとおりです」と言い返せるぐらい、歴史小説は調べ上げてから書かなければならない。」 週刊司馬遼太郎7「私と司馬さん」から 誠に、誠にもってシビレル限りのひと言なのだが、その司馬さんがいみじくも言うのだ。 西郷をして 「こういう種類の人間は、世界史にないようにおもう」 と。そしてまた 「尋常な人間知識、人間理解のていどでは、ああいうにんげんはよくわからない」 と。とどめはこうだ。 「私は、西郷隆盛という人物については、しらべられるだけ調べて、この人物がうまれた鹿児島にも何度かゆき、必要な人にも会い、かつ考えもした。 そういう意味での資料でなら、百時間でも語れる。しかし、どう語ったところで、西郷は出てこない」 司馬さんは最後にこう結論付けるのだ。 「西郷は会ってみなければわからない」 (いずれも「竜馬がゆく」から) かの空海ですら縦横無尽に綴る司馬さんをして「会ってみなければわからない」とまで言わしめたのは西郷隆盛だけではあるまいか(^^)v それはそうと司馬さんは西郷好きの所以をこう解いている。 「(西郷は)極度に大人な部分と、幼児のようなあどけなさが一つの人格に同居している。 西郷の魅力は、この相反するものがこの男の人格のなかでごく自然に同居し、間断なくその二つの顔が出たり消えたりし、さらにそれがきらきらと旋回するような光芒を発するところにあるらしい」 一見、論理であるようだが?結局のところ天門館の西郷好きのおじさんと同じだ! 好きだから好きなんだ、そして、好きなものは好きなんだ、そこに行き着くわけである。 「八重の桜」は見事な脚本だ。演出も素晴らしい。そして会津にカタルシスを求めるのだから薩摩が悪役となってしかたがない。 しかしいずれにしても、西郷を描くには役が重すぎる、そういうことになると思う。 さて、西郷好きの諸兄は溜飲を下げられたであろうか(笑) 「議を言うな!」 そう言われそうで心配です(汗) (議を言うなは「理屈を言うな、という意味につかう」、そう天門館のおじさんにお聞きしました。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.06.17 14:50:57
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