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テーマ:コラム紹介(119)
カテゴリ:コラム紹介
【東奥日報 天地人】 中国の貴重な古本を東京・神保町(じんぼうちょう)の古書店が保有している、と先ごろ本紙が伝えていた。値段は何と4億6千万円。12世紀ごろ刊行された漢詩集「唐人絶句(とうじんぜっく)」全22冊中の21冊で、中国では国宝級とか。古本もバカにできない。 作家の司馬遼太郎は膨大な古本を集めたことで有名だ。「坂の上の雲」を書く際は「日露戦争」の言葉が出てくる古本をことごとく集めたという。作家の出久根達郎(でくねたつろう)が自著「作家の値段」で紹介している。古本が司馬の小説を支えていたと言えるのかもしれない。 古本と接しているうちに、司馬は値段の付け方の絶妙さに感心する。使える本はそれなりの値が付き、使えない本は安いからだ。「古本屋の眼力に恐れ入った」と、心底思ったらしい。 出久根も大好きな津軽の作家・太宰治の著書を集めていた。ビール1本150円のころ、幸運にも「晩年」の初版をわずか800円で偶然手に入れた。10年後、金に困って手放したが、状態が良くないのに8万円で売れたという。すごい価値だ。 漢詩集に法外な値がつくのは初版本に近い唯一の品だからだ。太宰の「晩年」も物によっては300万円もするらしい。こんな話に接すると、何やら古本が宝物のように思えてくる。掘り出し物はどこにあるか分からない。暇な時間は古書店で過ごすことにしよう。 (10月23日) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 凄い話である。 通販CMで「なんと!」の言葉は聞きすぎて意味が薄らいでいたが、これは正真正銘の「なんと!」である。 『値段はなんと4億6千万円』の古本にはビックリだ! 痛快なのは中国の書物ということ。『国宝級』に胸がすく。 それはそれとして、自ら古書店員だった出久根達郎は面目躍如である。「晩年」の初版本を『金に困って手放した』というのが微笑ましくも出久根さんらしくて爽やかではないか。 そして司馬遼太郎氏。氏の功は多くの書物を残してくれたことのみならず、日本全国に散逸する「文献的価値の高い古書」をひとところに集めてくれたことにもあるのだ。これはもはや文化事業であり、司馬氏が望むと望むまいと、何かしらの勲章を授与されるに値すべき事だと私は思う。 天地人にもあるが、「坂の上の雲」では日本全国の古書店にしかるべきおふれが回り、トラック何台分もの古書が集まったそうだ。司馬氏はそれを値踏みするでもなく(といえ出来ないか・汗)受け入れたという。 だから司馬氏に関して、並みの歴史小説とはおおいに異なるのわけだ。一冊の奥に膨大な文献がある。そう思って間違いない。それを想像しながら読書に耽るのも一興である。 秋の夜長、そして読書の秋。古本でも新刊でも、或いは図書館の本でもよい。何か一冊手にとってみたいものではないか。 この秋、良書にめぐり合えることを願ってやまない次第である。 ときに初版本。古本における初版本の価値については学生時代に覚えた。以来「その日」を夢見て新刊を購入するときも初版本に限ってきた。もちろん「その日」はまだ来ない。先日は、学生時代に揃えた大量の本をアマゾンで調べ失望した。たかだか40年弱、あろうはずもないか(涙) こうなれば我が代にあらず、孫子の代に想いを馳せ、せっせと読書に勤しもう(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.10.26 06:12:33
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