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2014.02.21
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テーマ:コラム紹介(119)
カテゴリ:コラム紹介
【福井新聞 越山若水】
20140221

※明治35年2月22日撮影


作家、幸田露伴は言葉遣いには厳しかったらしい。娘で同じく作家の幸田文さんが座談会などでいろんなエピソードを交えて述懐している。
 
例えば若い男が「来やがる」「しゃあがる」と言おうものなら「ヤアガル人種」がいると憤慨。女性が電話で「あのね」「それでね」を多用すると「ネエネエ国人」だとからかった。
 
そして文さんに対し「悪い言葉を使わないのは自らを守ること。自分をいやしくしないことだ」と、言葉の乱れを厳格にたしなめたという(橋本敏男著「幸田家のしつけ」平凡社新書)。
 
露伴自身も随筆でこう記している。「身の姿を好(よ)くせんことのみ願ひ、言葉を良くせんことを願はざるは、こころ浅く拙し」。軽薄な話し方や無教育な言葉遣いを一刀両断にした。
 
とはいえ言葉は生き物、時代に連れ変わっていく。それは重々承知だが、しかしどうにもなじめない若者言葉が「まじやばいっす」。「やばい」は本来、良くない状態を意味する悪い言葉だ。
 
ところが予想に反して料理がおいしかったとき、想像以上にかっこいい人物や音楽に出会ったとき一様に「やばいっす」と口走る。「全国共通語」になっているのも不可思議だ。
 
最近改訂された国語辞典では「すばらしい」という意味が追加され、21世紀になって広まったと解説しているとか。さて露伴先生はこの言葉遣い、どう判定するだろう。
(2月19日)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

同日付の産経新聞の曽野綾子先生のコラム「透明な歳月の日」にこうあった。

『高齢者になって、私が自由を得たと思う点はいくつかる。もういつ死んでいいのだから冒険をしてもよくなったということ、高齢者に対する辛口の批判を言い易くなったことである。』

御年83歳の綾子先生は、

『まだぼけないうちに、高齢者には高齢を生きる技術として、他者の存在に深く配慮できる人であり続けるような老人学も教えた方がいい』

というのだ。何も難しいことを言っているのではない。
周囲へ配慮をして『無理をしても明るく』振る舞っていろ、そういうのだ。
明快で、力強くそして潔い。歯に衣着せぬ物言いは清潔感があり、綾子先生らしい筆致に安堵を覚える。『言葉の乱れを厳格にたしなめた』幸田露伴の如く見えるのだ。

越山若水を読んでいて思った。
もっと言い切ってほしいのだ。
どうも奥歯に物が挟まったように感じる。コラム氏は

『言葉は生き物、時代に連れ変わっていく。』

と言いながらも、

『若者言葉が「まじやばいっす」。』

と言葉の乱れを憂いている。だったらもっと明確に言ってほしい。
よもやコラム氏が駆け出しの記者であるはずはない。分別をわきまえた大人であろう。社内では人物で通り、そして一言居士だからこそコラムを担当しているのではなか。
だからはっきりすっきり言ってほしいのだ。

お隣の岐阜新聞、分水嶺氏は年の初めにこう決意したそうだ。

『日本語は時代とともに変化するものだとしても、生理的に嫌なものは嫌だ。今年は意識して文句言いの頑固爺になろうと思っている。』

立派ではないか。この心意気を越山若水氏にももってもらいたい。ご参考まで、

『両者の中間をとるならば、それは単に両者を合して希薄にしたにすぎないのであって、力のないものになってしまう。』

中村元先生は著書でそう綴る。はっきりすっきものを言う、大人とはそういうものだと思うのだ。

ときに、以前にも書いたのだが、オリンピックが佳境をむかえ「与える」という言葉が耳につく今日この頃だ。
まずもって、「与える」とは

『相手の欲するものを、くれてやる』

と三省堂新明解国語辞典にいう。今でいう「上から目線」である。
スポーツの勝者が「応援してくれる人に勇気を与えることができた」というのは、それが意図するものではないとしても、そう発言することによって「応援してくれる人が欲していた勇気をくれてやった」そういう意味になるのだ。
勇気を与えられた、という応援者もしかり。勝者に対し猛烈にへりくだる気持ちがあるのならいざしらず、縁もゆかりもない人に対して自分を貶めることになるのだ。曰く、

『悪い言葉を使わないのは自らを守ること。自分をいやしくしないことだ。』

このごろはNHKも平気で「勇気を与える」という。いわんや民法の女子アナをや、である。
『文句言いの頑固爺』には目を光らせていてほしい。時に吼えてほしい。その願ってやまない。

そしてもうひとつ。
一時は指摘があったがそれきりになったことに

「させていただく」

がある。どこぞの社会学者が「させていただく症候群」とうまいことを言っていたが、すでに聞くことはなくなった。もはや時代に馴染んでしまったか。
それでも、なんでもかんでも「させていただきます!」は閉口だ。これも『文句言いの頑固爺』にご指摘願いたいものだ。

20130124aisatsu





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最終更新日  2014.02.22 09:16:13
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