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テーマ:コラム紹介(119)
カテゴリ:コラム紹介
【北國新聞 時鐘】
中国は「矛盾(むじゅん)」の本場(ほんば)である。どんな盾(たて)でも突(つ)き刺(さ)す矛(ほこ)。どんな矛も防ぐ盾。二つを売る男に客(きゃく)が聞いた。この矛と盾で戦うとどうなる?有名な「矛盾」の故事(こじ)である。 現代中国の生みの親・毛沢東(もうたくとう)に「矛盾論(むじゅんろん)」がある。社会も自然も対立(たいりつ)するもの同士(どうし)がぶつかることで前進(ぜんしん)する。資本主義(しほんしゅぎ)が抱(かか)える矛盾が新しい社会を築(きず)くのだと労働者(ろうどうしゃ)を鼓舞(こぶ)した世紀(せいき)の一冊(いっさつ)である。 習近平体制(しゅうきんぺいたいせい)で進む腐敗追放(ふはいついほう)も「矛盾」に満(み)ちている。1兆6500億円相当も蓄財(ちくざい)した党幹部(とうかんぶ)を摘発(てきはつ)した。しかし、一個人(いちこじん)がそこまでできる体制とは何か。なぜ今まで放置(ほうち)されてきたのか。追及(ついきゅう)すればするほど一党独裁(いっとうどくさい)の矛盾が浮(う)き彫(ぼ)りになる。 独裁国家特有の政治闘争(せいじとうそう)との見方も強い。しかし一党独裁は、20世紀初頭(しょとう)の貧(まず)しい労働者(ろうどうしゃ)が権力(けんりょく)を握(にぎ)るための時限立法的(じげんりっぽうてき)な制度ともいえる。国が豊(ゆた)かになれば矛盾が噴(ふ)き出すのは当然だろう。豊かさを享受(きょうじゅ)して制度は昔(むかし)のまま。皮肉な21世紀の「矛と盾」に思えないか。 資本主義の矛盾が社会主義を生んだとするなら社会主義の矛盾は何を生み出すのだろう。富(とみ)の偏在(へんざい)と粛清(しゅくせい)だけなら国民(こくみん)が哀(あわ)れだ。 (8月4日付) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 渦中の人は周永康という。 かつて『インド人もびっくり!』というCMがあったが、この金額にアラブの王様もびっくりしたそうだ。いわんや庶民の我々をや、である。 さらに輪をかけて驚いたのは、報道によってその金額が異なっていることだ。1兆7000億円と報じているところあり、或は1兆5000億円と報じているところあり。時鐘は中を取ってか1兆6500億円。その差額たるや、ナント2000億円である!途上国の国家予算以上に相当する金額なのだ。 いやはや、これはもう笑うしかない。 「それを言っちゃあおしまいよ」 寅さんでは、おじさんに「出てけ」と言われた時そう返す伝家の宝刀がある。 「そこまでやっちゃおいまいよ」 まさにそういう金額である。そしてまた、2000万のフェラーリを見て感動する金銭感覚と、2000億の違いを指摘する金銭感覚は、同じ金銭感覚でも別次元の量り事である。と思うのだ。 それにしても、1兆6500億円(中をとる)を蓄財できる国家とは、いったい何であろうか。渦中の御仁は序列九位という。その上には八人が存在するわけだ。つまり御仁より強力な権力を有した者が八人いるわけで、一党独裁の社会主義国家において、同様なことが行われていると考えても無理はない。のでは? それが時鐘氏のいう『社会主義の矛盾』であろうか。何だか最後っ屁のようで手におえない。矛盾の闇はすでに想像を絶している。民主国家においては、闇の深遠推察すること能わず、ということであろう。 皮肉にも彼の国から学んだことであるが「君子危うきに近寄らず」というではないか。こういう国家は遠巻きに見ているに限る、そう思う。 ときに「周」はあまねく、或は、くりかえす、の意。蓄財があまねくくりかえした結果だとすると、「名は体を表す」ということではないか(これも彼の国の教えか!)。そして「習」は、ならう、である。推して知るべし。 なお、北國新聞は明治26年8月5日創刊だそうだ。創刊記念日を心よりお祝い申し上げる次第である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.06 06:13:38
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