吟遊映人 【創作室 Y】

2023/04/15(土)08:00

刑事コロンボ〜ホリスター将軍のコレクション〜

映画/TVドラマ(30)

【刑事コロンボ 〜ホリスター将軍のコレクション〜】 「彼の人柄がよくわかりますよ。ここに展示された本には、彼を狙った銃弾がめり込んでいます。危うく助かりましたが、将軍は眉ひとつ動かさなかったのです。(その一例からも)彼がどう言う人間か想像がつくでしょ? 度胸があり過ぎるんですよ。とても普通じゃありえない。私なら気絶するところです。普通の人間ならうろたえるのに、彼はどんな状況でも冷静そのものだ」 私は、元夫が自律神経失調症とうつ病を患っていたこともあり、周囲の人たちが元夫のことを腫れ物でも扱うようにするのを、何度となく目撃した。 もっとタチの悪いのは、妻である私自身が心の病に理解がなく、ただ指をくわえて手をこまねいていたことだ。 結局、私は離婚してしまったのだが、元夫はその後、障害者手帳を取得し、福祉のお世話になったとのこと。 たまに私のところへ電話をかけて来ては、「みんな俺の話なんかまともに聞かないんだよ。何でか分かるか? 精神科に通ってるからさ」とグチをこぼした。 そんな元夫も亡くなって12年が経つ。 今回私が見た〜ホリスター将軍のコレクション〜において、事件を目撃した女性は精神に疾患を持つ者という設定である。 一番信頼に値する身近な母親でさえ、娘の心の病に辟易している有り様なのだ。 この状況をたとえドラマの上でも目の当たりにすると、何とも言えない苦いものがこみ上げて来るのだ。 ストーリーは次のとおり。 退役軍人のホリスター将軍は、第二次世界大戦や朝鮮戦争で活躍した英雄であった。 そんな彼は、事業が成功し独身貴族を謳歌していた。 ある時、ホリスター邸に調達課のダットン大佐が訪ねて来る。 慌てた様子のダットン大佐が言うには、海軍に会計監査が入るとのこと。 実はホリスター将軍とダットン大佐は癒着し、莫大な資金を海軍から横領していたことから、ダットン大佐は狼狽を隠せないでいた。 一方、ホリスター将軍はそんな一大事を聞いても、眉ひとつ動かすことなく冷静だった。 ダットン大佐はこれからすぐにスイスへ飛ぶと言う。 ホリスター将軍は一考する。 この様子なら彼の逃亡は失敗し、いずれ自分の名前も明かされてしまうだろうと。 そこでホリスター将軍は迷わずダットン大佐を射殺してしまうのだった。 ホリスター邸は海辺にあり、その様子をヨット上から目撃する人物がいた。 彼女はヘレンと言う女性で、離婚の痛手から心を病み、ずっと投薬とセラピーを続けているような状態だった。 ヘレンはさっそく警察に通報するものの、駆け付けた警官もさることながら、傍にいた母親でさえ娘の言うことを単なる妄想としか思わなかった。 今回の作品のポイントとなるのは、加害者であるホリスター将軍が国の英雄であり、誰もが尊敬するカリスマ的存在であったこと。 一方、事件の目撃者であるヘレンは心の病を患っていて、定職に就いておらず、セラピーに通っているような状態なので、彼女の証言をまともに信じる人がいない。 それにつけ込んだ犯人のホリスター将軍は、巧みな話術でヘレンを虜にし、結婚をチラつかせ、彼女を囲い込もうとする。 やがてヘレンは恋に落ち、自分が目撃したものは、強い陽射しによる錯覚だったと証言を覆してしまうのだ。 このドラマから考えさせられるのは、いかに人というものが他者を色メガネで見ているかということだ。 同じ人間であることに変わりないのに、その人の持つ肩書きにコロっと騙されてしまうのだから、何とも情けない生きものではある。 でもだからと言って、その人の持つ背景や人柄を無視して事実だけを知るべきなのかと問われれば、それは何とも言えない。 せめて、物事には表裏があるのだと肝に銘じておきたいものだ。 犯人役は『ローマの休日』にも出演したエディ・アルバートで、〜ホリスター将軍のコレクション〜においても好演している。 1971年放送 【監督】ジャック・スマイト 【キャスト】ピーター・フォーク、エディ・アルバート

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