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2006.07.15
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カテゴリ:カテゴリ未分類
今週は、ヘミングウェイのワイン、ダイキリ、マティーニ。
ほろ酔い気分でいきましょ・・・。


     この世でワインほど文明的なものはないし、
     これほどの極致に到達した自然物も少ない。     
                              『午後の死』


いつごろヘミングウェイがワインの味を覚えたのかは分からないが、
第一次大戦中のイタリアであったらしい。
    
1919年、アメリカで禁酒法が成立、
ヘミングウェイがイタリア戦線から帰国した頃は、
レストランやバーで公に酒を飲むことは御法度(ごはっと)でした。
                        
短編『殺し屋』の中で、
レストランに入ってきた男が「なにか飲物はねえのか」と
語気を強めて店員に問いつめる場面・・・。

「酒はないのか」とあからさまに言えない禁酒法時代、
店の地下室から港までトンネルを掘り、
酒の密売をやっている店は少なくなかったようです。


     サンドウィッチを食べ、シャブリを飲みながら、
     車窓から田舎の風景を眺めた。
     麦がちょうど実りはじめ、畑にはケシの花が一面に咲きほこっていた。
     緑の牧場、その中に美しい木立が点在し、
     ときどき大きな川や城館(シャトー)が木々の間から見えた。
                             『日はまた昇る』        


1925年6月、ヘミングウェイ(25歳)は、妻・ハドレー、
アメリカからやって来た幼なじみのビル・スミスとともに、パリを発ちます。

行先はスペイン北部ナバラ地方の古都・パンプローナ。
『日はまた昇る』を読むと、オルセー駅からオルレアン経由の列車が
パリの市街地を抜けるや否や、車窓に田園風景が広がるシーンがあります。

フランス白ワインの代表、辛口のシャブリを
ちびりちびりと口に運ぶヘミングウェイ。
列車に揺られながら旅する愉しさが淡々と描かれ、
流れ行く美しい景色が鉛筆画のようにさらりと描写されています。


     バーテンのコンスタンスが作るフローズン・ダイキリは逸品で、
     アルコールの味がせず、飲むほどに粉雪を蹴散らかしながら
     氷河を滑降する心地がする。
     6杯、8杯と重ねると、ザイルなしで氷河をスキーで急降下する心地だ。
                            『海流の中の島々』


キューバ・ハバナの旧市街地に「フロリディータ」という名のバーがあります。
パパ・ヘミングウェイは、仕事の合間にふらりとやって来て、
楽しんだのがフローズン・ダイキリ。

シュガー抜きのドライのダブルは、「パパ・ダブル」と呼ばれ、
かつてヘミングウェイが腰掛けた指定席には、
今は深紅の飾り紐が巡らされ、誰も座れない!

遺作『海流の中の島々』の主人公・ハドソンもこの店の常連客。
別のシーンではダイキリの美しさをこう讃えます。

     
     手に取ると重いグラスは霜で白く縁取られ、
     細かく砕いた氷の透明な部分を見ていると、海を思い出した。
     細かな氷の部分は船の航跡のごとく、
     また澄んだ部分は泥灰土の浅瀬を進むときに
     船首が切る水そっくりだった。
                            『海流の中の島々』


『武器よさらば』のフレディックは逃亡兵。
ミラノからマジョーレ湖畔の町・ストレーザにようやくたどり着くと・・・。


     サンドウィッチがきたので三切れ食べ、
     さらに二杯マティーニを飲んだ。
     これほど冷たくて爽やかなのはこれまで味わったことがなかった。
     自分が文明人になったような気がした。
                             『武器よさらば』


湖面を望むグランド・ホテルのバーで、マティーニを味わうフレディック。
追われる恐怖感にさいなまれる身に、
その清涼な味は、つかの間の安逸の時を与えます。

戦火に疲れた男の胸に、その清楚な味は「文明」を感じさせたのでしょうか。
やがて逃亡の日々は終わり、
愛するキャサリンとの再会の時が訪れるはずでしたが・・・。

                  *『ヘミングウェイの言葉』(今村楯夫)

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Last updated  2006.07.19 22:36:26
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