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ここむ123

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2009/01/09
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深夜。

ある大型スーパーの駐車場で、僕は見た。

僕は家政婦じゃないけど見た。


当然だがスーパーの営業時間は終了しているため、駐車場に車の姿はない。

無料送迎バスだけが十数台とまっており、その影が地面に濃い色を落としている。

いくつかの常夜灯に照らされた無人のバスは、

大都会の陰の部分を象徴しているようで、どことなく寂しげでもある。



とても、とても静かな夜だった。

聞こえる音といえば、悲しげな犬の遠吠えと、

大通りを走りすぎるトラックの走行音のみ。

そんな穏やかすぎる、しかしいつもどおりの午前2時の上海の夜。



その日、僕は少々酒に酔って家路をたどっていた。

日本式の忘年会とその後の二次会に出席し、しこたま酒を飲んだ。

間もなく迎える2009年は、会社も相当に厳しい状況になるだろう。

見通しの暗い年越しを吹き飛ばすかのような、明るい飲み会だった。

こういう日の酒は、僕の脳を気持ちよくとろけさせてくれる。



僕の家までは、この駐車場を横切っていくのが最短コースだ。

いつもは車が出入りしていて危険なため使わないルートだが、

こんな深夜なら間違いなく最短、そして最速なのだ。

少し酔いのまわった身体をふわふわと前に進ませながら、

僕は家への道を辿っていたんだ。



駐車場の中ほどに差し掛かったとき、妙な音が聞こえることに気がついた。

なにか布がこすれるようなシャッシャッという音と、

それに時折混じる、まるで獣の息遣いのような音が確かに聞こえる。



僕は少し身構えた。

日本でも年末には犯罪が増えるというが、それは中国とて同じこと。

いや、むしろ春節が近いこの時期は1年で最も軽犯罪の多い時期なのだ。

4年という年月が流れ、少々油断しすぎている自分を認識してもいる僕は、

カバンを左手に持ち替え、利き手である右をフリーにして耳を澄ます。



音は、どうやら僕の左斜め前から聞こえてくるようだ。

すこし歩くペースを緩め、その声のする方向に注意を向ける。



シャッシャッフッ・・・


音は確実に近づいている。

バスの向こう側、ちょうど常夜灯の下あたりが音の発生源で間違いないだろう。

注意深くバスを回り込み、そっと顔をのぞかせてみる。






  フッ シャッ
フッ フッ
  シャッ フッ
 ンー シュッ


おじさんが、腹ばいになってクネクネしていました。





なんていうの?

腕立て伏せしてるつもりの人っていうか・・・

ああもう、絵で書いたほうが早いか。

つまり、こういう体勢なんです。




うでたておじさんの図.JPG

はい、これね。


・・・うるさいなあ、絵はニガテなんだよ。



ただ、これだけなら俺おどろかなかったと思うの。

もちろん深夜2時にスーパーの駐車場で腕立てっていうのも、

まあちょっとアレな気はするけれども、超好意的に考えてあげたら

"ギリセーフ"かなって思うの。



ところがおじさん、ヒジまっすぐのままで腰だけ猛烈に振っている。

がっくんがっくん振っているの。

腕、立ったままでぜんぜん伏せらないの。



シュッシュッていうのは、おじさんが着ているウィンドブレーカーの

衣擦れの音で、フッフッてのはおじさんのあえぎ声でした。


・・・って、どう見たってセッ○クスの練習じゃん。

あの腰のストロークと角度は、どう見たって正常位だ。

そしてあのまっすぐ下を見つめた顔。

あれは愛しい誰かを見つめている想定に違いない。

でもあの速度で腰振ったらすぐ終わっちゃいそうね。



あーもう、こんなもんにビビってたわけか、おれは。

格闘技などカケラもやったことないのに戦闘体勢っぽいポーズとか、

はたから見てる人がいたら、さぞかし面白い出し物だったに違いない。

だれもいなくて本当によかった。

だいたい、地面にはいつくばって腰ふってるおっさんが怖いか?


ん・・・まあ、怖いね。





バスの陰から半身だけ乗り出した格好で固まっている僕。

まったく気にせずセッ○クスの練習を続けるおじさん。


おじさんは確実に視界に入っているはずの僕を気にもとめない。

その腰は、ガクガクと巧みにピストン運動を繰り返す。

僕は動けない。

身じろぎもせずに、ただそれを見つめている。


ふたりの時間は、静かに流れていく。




ここむ



※今回ノンフィクションっぽく書いてみましたが、実際ノンフィクションです。





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Last updated  2009/01/09 10:47:21 AM
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