ダニエル・クレイグの挑戦は続く
007カジノ・ロワイヤルを見る前から、ダニエル・クレイグの魅力の秘密はどこにあるんだろう、ってことばかり考えていた。いまだにそうだ。見れば見るほどハマる魅力の持ち主。映画自体も魅力に満ちていて、見れば見るほど、もっと見たくなるのだが。今まで何人のスターにハマったか、わからないけれど、ダニエルに関して言うと、恋してしまったような感じではなく、舌を巻くって感じ。尊敬に近くて、先生のよう。なぜかというと、映画にかかわる彼のスタンスが凄いと思うのだ。「リスクのない仕事はしない」と宣言しているぐらいなのだから。常にエッジにいようとする(リアル・フェイスのような)姿勢は、他の俳優(俳優以外でも)の追従を許さない。もともと上手さでは、定評があるのだからオファーは途切れないだろうに、彼の選ぶ役は、議論を呼ぶものばかり。今回のボンドにしたって、Infamausの同性愛者の実在の殺人鬼ペリー・スミスだって、そう。彼の歩くところ、議論が巻き起こるという感じだ。ボンドはともかく、保守主義者もたくさんいる欧米では、彼は「道徳観念のない俳優」と思う人だってたくさんいるようだ。日本では、どんな映画だろうと、役だろうと、「インモラル」なんて思う人はいないだろうけど。そして、今年の冬に公開されるライラの冒険シリーズ、『黄金の望遠鏡』は、今から宗教保守主義者の間では騒がしく反対派が台頭する問題作だ。映画は子供向きのファンタジー、でも実は思想的には深くて、反宗教的に自由な精神の追求が描かれている。ナルニアが、保守的なキリスト教世界を描いているとしたら、それに異議を唱えるような映画になるはず。そして、その次の作品I, Lucifer では、悪魔を演じる。保守的で閉鎖的な世界に戦いを挑むような役選びじゃないだろうか?現実や世界を取り巻く見えない境界線を切り裂くような勢いで仕事を選んでいるような感じだ。しかも、映画の成功のためには、何でもするという。ボンド役のプロモーションでは、日本を始め、韓国、オーストラリア、どこまでも行くようなツアーをやり遂げた。結果、大成功を収めた。その凄さは、腰が引けてる私には、まばゆいばかり。