山田詠美「ジェントルマン」
寒いので(最高気温もマイナスとなりました)引きこもりの日々のお供は、 なんといっても本かな~。 山田詠美の新刊が出ていたので買って読んでいたら 面白くて一気読みでした。 【送料無料選択可!】ジェントルマン (単行本・ムック) / 山田詠美/著 滑り出しは「僕は勉強ができない」風だったのですが、 全く違いました。 小説にはストーリーで読ませるものと、 主人公の心理描写などの丁寧な描きこみが面白いものと、 いろいろあると思いますが、 山田詠美の作品はどれも、その心理描写がさえていて、 「ああ、これこれ、私もそんな風に思っていたんだよな~」と思いつつも 言語化できなかったことを、 見事な文学的表現に乗せてさらりと語ってくれるので、 私は好きです。 今回の「ジェントルマン」の人物設定やストーリーの結末は、 そういう意味では決して斬新ではなく、結末が薄々読めていたのですが、 随所にさえる山田詠美独自の表現や、 これは作家本人の意見を登場人物に語らせてるのか? と思うようなところ (たとえば 圭子の「自分たちのこと、いい年齢して女子とか呼んじゃってさ。 逃げ道を残して媚びてる感じ」というセリフなど) にクスリとさせられたりで、 近年の山田詠美の作品の中ではかなりいいな、と思ってます。 しかし、山田詠美の小説は、 ゲイや暴力など特殊な題材を扱った今回のような作品でなくても 引き付けられるし、 彼女のように、作家としてのスタイルが確立された作品を読むと、 妙な安心感があります。 サラサラッと一気に読めても、山田詠美の小説は「文学」なんだな、と 実感するような、骨があるというのか。 しかし、読む本がなくなったので、また調達しないといけなくなりました。。