映画「RAILWAYS」を見て
産後約3年ぶりに、映画館で映画を見てきました。 臨月に「パイレーツ・オブ・カリビアン」の3作目?を 見に行って以来のことです 実家に帰ったときに、子供を親に預けて映画館に行くくらい 雑作もないことなんだけど、 帰省中は映画を見る時間があれば、久々に会った友人と できる限りたくさんのことを話したい、と思ってしまいます。 何より映画情報を自然とチェックしなくなったので、 上映中の映画で何が面白そうか、さっぱりわからないんですね。 しかし「RAILWAYS」は、 鉄ママとしてはぜひ見に行きたいと思っていたし、 夫が見て「泣いた~感動した~(涙)」といい、 自分から「子供を見ていてあげるから、RAILWAYS、見てくれば?」 と提案してくれたので、 先週末にお出かけしてきたのでした 感想は、 そうですね、夢をかなえたいと思っている全ての人、そして、 鉄道ファンにとって、とっても感動的で、 希望を与えてくれるような映画でした 中井貴一さん、かっこいいです 冷徹なビジネスマンが、故郷・島根の私鉄の運転士へと転職し、 変化を遂げていく姿を見事に演じきっておられました。 中井貴一演じるエリートサラリーマンが、 故郷の母が倒れたり、会社の同期が事故でなくなったり、といった 様々な出来事の中で「自分は子供の頃、一畑電車の運転士になりたかったんだ」 という夢をふとした拍子に思い出し、 49歳にして、初めて自分の夢に向き合った というストーリーです。 これは映画だから、幾分上手く行きすぎる、と思われるような点は あるにしても、 何歳からでも、自分がしたいこと、夢に向けて歩んでいくには 遅すぎるということはないんだ、とつくづく感じさせられます。 勇気をもらえます。 一方で、夢に破れたからといって、 それでおしまいではないのだ、というメッセージが、 中井貴一と同時期に新人運転士となった若者によって もたらされます。 彼は、甲子園で活躍し、プロ入りも決まっていたのに ひじを痛め、あえなく野球選手になるのを断念し、 とりあえず、やる気もなく電車の運転士になったのですが、 中井貴一と共に仕事をする中で、 運転士という仕事のおもしろさに目覚めていきます。 「夢に初めて向き合った中年」と、 「夢に向かってまい進していたのに、夢破れて自暴自棄になっていた若者」が、 それぞれのやり方で自分の夢に決着をつけていきます。 こうしてみていると、 この映画は、「夢を持って生きよう!」「夢に向き合ってみよう!」 というだけではなく、もう一歩踏み込んで、 夢が叶おうと、夢に破れようと、 自分の夢に、きちんと正面から、最後まで向き合った者だけが、 新しい未来へ踏み出せる ということも伝えているような気がします。 とても良い映画だったのですが、 ただ1つ気になったのは、中井貴一とその奥さん(高島礼子)の関係が 今後どうなるのかということ。 奥さんは、中井貴一が故郷の一畑電車の運転士になる少し前に、 自分の夢をかなえて、ハーブのお店を持ったばかりだったので、 中井貴一と一緒にその故郷・島根へついて帰ることはせず、 東京で暮らし、別居生活を始めます。 奥さんは、ずっと「このままの夫婦関係でいいのだろうか?」と 悩み続けたけれど、 最後に中井貴一の運転する電車に乗って、 中井貴一の運転士としての姿を見て、 「これでいいんだ」「この人にとっても、私にとっても、 この選択は間違ってはなかった」と納得するところで 話は終わっていたのですが、 やっぱり私は、一女性として、高島礼子演じる奥さんの立場や 思惑が気になって仕方がなかったです。 もし奥さんが、自分の夢を持つ事がなく、 ずっと専業主婦だったら、 夫が大企業のサラリーマンをやめて、 島根で運転士になる、といいだしたら、 その夫の背中を押してあげることができたでしょうか? 家のローンはどうするの?? とか、娘の大学は?? とか、目先のことや、生活の不安が先に立って、 夫の夢を応援してあげることが、なかなかできなかったと思います。 いくら、仕事人間で家庭をかえりみない夫に失望していたとしても。 だから、奥さんが夫よりも先に自分の夢をかなえていた、という 前提は大切な前提なんだけれども、 そんな妻の理解のかいもあって、 夫が特に障害が生じることなく、 とんとん拍子に運転士になって、毎日楽しく過ごしているのに対し、 夫婦関係に悩み、その「影」の部分を一人で引き受けているかのように 見えるのは、奥さんだけです。 自分の夢と、夫の夢をすり合わせることができるんだったらなあ・・・ という高島礼子演じる奥さんの揺れる思いや孤独は、 運転士というなれない仕事をこなすのに いっぱいいっぱいな夫には、 いくら冷徹なビジネスマンではなくなったとはいっても、 やはり、相変わらず届いていないようでした。 一人娘も、島根のおばあちゃんが大好きで、 おばあちゃんが倒れると 夏休みの間中、おばあちゃんの側にいてあげるという やさしい娘なんだけれど、 「一人で暮らしていたおばあちゃん、さびしかっただろうね」 とおばあちゃんに同情的な割には、 一人で東京に残っている母親の孤独には思いが至らないようでした。 ううむ、心の硬化していたビジネスマンが夢と家族愛を 取り戻すお話なんだろうけど、 だから、奥さんとの関係、心理的葛藤といったことを詳しく描きこむ のは省かれたのに違いないけれど、 一人の妻として言わせていただければ、 もう少し、高島礼子サン演ずる奥さんに対する家族(夫と娘)から の気遣いが欲しかったわ。 彼女が家族の中では「夢をかなえた」先駆者であり、 だからこそ、夫の夢を理解しえたんでしょう?? 物語は一端幸福に帰着しましたが、夫婦関係に関しては、 さらに「夫の夢と妻の夢をすり合わせる接点」が 今後見えてくればよいな・・・・、と思わずにはいられない、結末でした。 一方では夫の老いた母親や、故郷に対する愛が強調されていて、 それはとても大切なものではあるのですが、 “地方”“お年寄り”といった、「わかりやすい『弱者』」寄りの目線は、 きっとストーリーを明快にして、とにかく一番伝えたいことを はっきりと伝えるために、ある程度自覚的に用いられているのかな、 と思いました。 まあ、あんまり複雑に考えずに、 自分の子供の頃の夢ってなんだったっけなあ?? なんて思いながら、 一畑電車の渡る、のどかな光景や田舎の畑を見ていると 気持がおおらかになってくる、 やさしい気分になってくる、 そんな映画でした。 それにしても、 一畑電車に乗りにいきたいよ~!!! それが私の今夏の夢でしょうか?!