心の色

自分の机の上には、
小さなピエロのヤジロベイが
置いてあります。

その小さなヤジロベイは、
さらに小さい台の上に、
立っています。

それは、少しの振動でさえ、
ゆらゆらと揺れてしまう、、

それ程、小さいピエロの
ヤジロベイでした。

その小さなピエロの小さい頭を、
指で、ちょこんと押すと、、

右へ左へ、、
左から右へと、、

小さなピエロは、
小さな台から落ちないように
必至にバランスを保つ為に
身体を動かしています。

ふと、眺めていると、、、

どうした事か、
このピエロの顔が
何だか自分とダブって
見えて来てしまいました。

右へ左へ動くそのピエロが、
日々の生活の中で揺れ動く、、、

自分の心の動きを
表しているかの様に
感じてしまいました。

揺れ動く気持ちの中で、
私達は何かを感じ、
決心して行動をします

その行動に、一喜一憂しては、
また日々の生活を繰り返す、、

良い事があった日、、
あまり良い事がなかった日、、

そんな日々を、
このピエロの様に
心を揺らしながら、
繰り返しています。

ここで、ふと思いました。

もし、このピエロのヤジロベイ、、

揺れない様に
固定したらどうなるだろう？

そうしたら、、

自分もちょっとの事で
心を揺れ動かされない様な
そんな気持ちになれるのでは、、

そう考えて、、、

小さなピエロのヤジロベイを、
固定してみました。

もう、小さなピエロは動きません。

指でちょこんと押しても、
びくともしません。

机を揺すろうと、、、

開いたページがめくれる位に、
強く息を吹きかけても、

まったく、動く事は
ありませんでした。

何が起こっても
動じないピエロ、、

それこそまさに、
自分の望んでいた姿が
そこにありました。

どんな事があっても、
心が動じない自分、、

それを、垣間見た気がしました。

もう動く事の無くなった
小さなピエロ、、、

暫らく、ぼんやりと眺めていると、、

本当に求めていた事とは、
何だか違う、、、

そんな気分になりました。

その小さなピエロは、、

もう、私が起す小さな振動に
答えてはくれません

そよ風に近い私の吐息にも、
答えてはくれないでしょう。

何も答えてはくれない
この小さなピエロと、、、

どの様にして、私は会話を
楽しめば良いのでしょうか？

人は、この小さなピエロの様に、
誰かの起す振動に、
心を動かされています。

それは、喜び、悲しみ、、
日々、心を動かされています。

もし、心が動かないとしたら、、、

この先、悲しみを感じる事は、
無いですよね？

ですが、悲しい気持ちが
分からないのですから、

心から喜びを感じる事も
出来なくなったりは
しないでしょうか

悲しみをなくす事を、
頑張る人が居ます。

喜びばかり、
求める人も居ます。

でも、どちらか一方だけを
故意に何かしようとする事は、
私がヤジロベイにした事と、
何ら変わりはない気がします。

悲しみがあるから、、、
喜びの時を味わう事が出来る、、

喜びがあるから、、、
悲しみを感じ乗り越えようとする、、

その揺れ動く気持ちがあるからこそ、
人は人として生きていく事が
出来る気がしませんか？

その揺れ動く気持ちの中でこそ、、

人として誰かと、
心を通わせる事が
出来るんだと思います。

喜びも悲しみも、
あるからこそ、

感じる事の出来る
人の気持ちがあります。

揺れ動く心を、
無理にとめないで下さい。

このピエロの様に、
感じるままに、、

私も日々、心を揺らし
生きて行こう

そう考え、小さなピエロを
固定していたとめ具を、
そっと取り外しました。

小さな台に乗った、
小さなピエロのヤジロベイ、、

今日も、ゆらゆら揺れながら、
この机の上で、立ち続けています。