驚愕!?ドン・キ放火未遂と金商法
驚きました!久しぶりに熱くなった金商法違反事件が起きました。本当は、オールアバウトに書きたかったのですが、メンテナンス中ということ更新不可能なため、楽天ブログで、1か月ぶりに金融商品取引法のお話をします。量販店ドン・キホーテの東名横浜インター店で商品を放火する事件がありました。容疑者は、電気設備会社社員(36歳男)。当然のことながら、彼は、放火未遂(現住建造物等放火未遂)と業務妨害(威力業務妨害の罪)で逮捕・起訴されました。未遂とはいえ、放火で熱くなるなんて、なんて不謹慎な!違います!放火は許し得ない犯罪です。放火で熱くなることはありません。熱くなったのは、この男、逮捕された後で、金融商品取引法違反だったことがわかったという驚愕の事実で、です。暴力又は脅迫の禁止規定(金商法158条)違反で追送検されました。実は、暴力・脅迫違反の適用は、証券取引法時代を含めても、史上初なんです。おそらく、空前絶後の事件として金商法の歴史に刻まれるのではないでしょうか。<暴行・脅迫違反>普段、金融商品取引法にかかわる仕事をされている方の中でも、「暴力・脅迫違反」は聞いたことがない方もいらっしゃると思います。その方も「風説の流布・偽計取引の禁止」と聞けば、「あ、知ってる」ということになると思うんです。「偽計取引」は、堀江氏が逮捕されるきっかけとなった証券取引法の禁止規定(違反は懲役を含む刑事罰)として有名になりました。この「風説の流布・偽計取引の禁止」も金商法(証取法)第158条です。風説の流布・偽計取引の禁止規定は、本当は、「風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止」です。条文を確認してみましょう。「何人も・・・相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。」(金商法・証取法共通)(なお、「何人」は、「ナンピト」と読みます。)私は、講演だったか、ブログだったか、何かで、この規定について、「相場を変動させる目的で、暴行や脅迫をするケースは、想像がつきません。何かあったときに、法律の隙間を作らないための、念のための規定でしょう。」と説明したことを覚えています。拙著「金融商品取引法の基本がよくわかる本」でも、「風説の流布」を説明したページで、暴行・脅迫の禁止は説明していません。違反事例を、想定していなかったからです。そんな条文が、適用される事件が、こんな形で起きようとは想像もつきませんでした。実際、「この禁止規定は、こういう犯罪に適用されるんだ」と初めて知りました。<事件の概要>この男、こともあろうに、ドン・キホーテの株式を「空売り」していたというのです。空売りですから、株価が下がれば儲かります。そこで、株価を下げようとして起こした行動が、放火(未遂)だったといことが、男の供述でわかったという事件です。相場(株価)の変動(下落)の図る目的で暴行(放火未遂)をしたそれが、この放火未遂事件の真相だったということがわかったので、神奈川県警の捜査本部に、証券取引等監視委員会が参加、合同捜査をしているというのが、記事の概要です。ヤフーのサイトで、金商法違反(以前は証取法違反)のサイトがあります。毎日見ているサイトの一つですが、そこに、この記事が掲載されていて、気がつきました。情けないことですが、この事件は、私の記憶のみならず、昭和23年に誕生した証券取引法・金融商品取引法の歴史の1ページにに刻まれることでしょう。