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テーマ:韓国!(16901)
カテゴリ:映画
チョン・ウソン、ファン・ジョンミン
チュ・ジフン、クァク・ドウォン チョン・マンシク主演 キム・ソンス監督『アシュラ 아수라』(2016年) (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 韓国公開時はそれほど高評価ではなかった、が... こんな市長いる?と。 架空の地方都市アンナム市はゴッサムシティ Gotham Cityのようでもある。 最近の日本は地方自治体も(大阪市、大阪府などがわかりやすい例か) 内閣の中枢も伏魔殿状態だから 日本で起こっていることを念頭に置けば大分とっつきやすい。 証人を逃し、市長の起訴に失敗した検事を前に 「今、どんな時代だと思っているんだ」と検察を揶揄し見下す市長。 一方で、盆唐や一山市等、同じ京畿道にある新興都市のように アンナム市を盛り上げよう、金持ちの街にしようとプレゼンをぶち上げる際は 「維権の時」と懐古に走る。 維権、すなわち第4共和国の維新体制時代(1972年10月から1979年10月頃)のように あの高成長時代をもう一度、と過去を美化するは保守派的発想。 この「時代」を自身に都合よく使い分けるしたたかさ、 ある種の時代錯誤ぶりだけでも モンスター的市長とわかるが... 殺人教唆などは一地方自治体の首長が手を染めるとは思えないが 市長の崩壊したモラルやモンスターぶりを強調し象徴もする装置、 架空のゴッサムシティのナラティブと受け止めた。 『インサイダーズ/内部者たち 내부자들』 『ベテラン』などとの相違は 一般人、民間人がほとんど入って来ず(チンピラは別として) 財閥も視界にはなく アシュラのように悪鬼のように争い闘い続ける三つ巴の三者が 全て公務員/公職者ということ。 全員公務員/公職者。えっ、公務員。それなのに... 公務員、全体の奉仕者。 大韓民国憲法第7条第1項 「公務員は国民全体の奉仕者であり、 国民に対して責任を負う」 公務員が、上から下まで!?全員このような姿態を見せ続けるとは... 外道だけの公務員阿修羅。 ゴッサムシティの悪徳警官のように 賄賂をポケットに入れ続ける警官、 捜査のために脅迫や拷問も辞さない検察、 そしてcivil servantどころか 殺人や麻薬にも手を染める金の亡者の市長。 公務員がアシュラとして描かれる地獄絵図は 誰も這い上がれない、同じ穴の狢蠢く魔界。 義理も人情もいっさい通用しない、 殺されるか殺すかの底辺から蜘蛛の糸をつかむのはだれか... 日本語字幕には逐一訳されてはいないが 市長パク・ソンベの異母妹を妻としたドギョンに 市長が「兄の俺が(兄として)うまく収拾するから」と 兄として声をかけるところ。 義兄という立場を悪用しているかのような、 庇護する兄ではなく搾取する兄でありながら 言葉の表面上は義理があるように見せる 義理のない兄の姿にはぞっとする。 一方、弟分のソンモを巻き込んでしまったドギョンが ついにソンモに謝る時も 「兄の俺が悪かった」 と一人称として兄が飛び出す。 こちらは兄としての立場から謝罪していたのが対照的で印象的。 兄貴としてのプライドを保とうと揺れもするドギョンと 兄貴分を越えようと焦るソンモの心境も見てきたから。 悪の華、ゴッサムシティでさえなければ 義兄と弟、兄貴と弟分は切磋琢磨しながらも もう少し義理あり兄弟らしい情で生きられたのかも... とも考えてしまう。 そして、 そんな風に、どちらが上か下か どちらが兄でどちらが犬なのか 検察がえらいのか刑事風情はタメ口をきけないのか、 口のきき方、敬語等にその時の立場や心情、 立場の入れ替わりや状況の変化も込められているセリフもいくつか。 異母妹を口先だけで気遣う義兄の市長の言葉(これまでもそうだったのだが)に ついに「心がこもっていない」と言い放ち 言葉、言葉遣いの変化、切り替えが口火を切った闘い方を見て やはり韓国人は言葉遣い、言葉、言葉の上下が大切なのだ、とあらためて。 (そのあたり、とても微細な変化だったりする) 言葉といえば... 全員公務員による血みどろのバイオレンス・アクションだが、 悲壮だが冷めた、捨てられた犬のように投げやりなドギョンのナレーションが 回想形式で映画の枠組みを作っている構造は やはりフィルム・ノワールの余韻を残しもする。 ソンモがあっという間に悪に染まってしまう展開は拙速な気もした。 あまり葛藤もなさそうで... 一方、ドギョンが外国人に銃を奪われた後 銃を取り返すために危険を顧みず必死に食い下がるところには 腐敗しきった警官といえども 銃は決して奪われてはならない(警官が銃を紛失するのは重罪だからかもしれない) という最後の矜持が見えて興味深かった。 阿修羅とはいえ 病床の妻にさえ悪い警官と見抜かれていたとはいえ、 警官としての最後の良心がゴッサムシティの小さな希望のよう。 冒頭のナレーション、人間の皮をかぶった獣... と吐き捨てるように切り捨てた、獣たちとも一線を画すような アンチ・ヒーロー、ダーク・ヒーローの面目。 (話す時に喉が動きすぎるのはヒーローっぽく見えなかったが...) その銃は、オートマティックでない銃は 最後に大活躍もする。 葬儀場でのアクションは グラスを噛み砕いて「犬」の恨を吐き出すかのようなシーンと 死体が多すぎでもすぐに葬儀可能、 死に近過ぎて、死に向かうしかない、 死と背中合わせ過ぎるシチュエーションもなかなか興味深かった。 地上で最も地獄に近い場所、 ドアツードアで速攻地獄行き、な葬儀場で繰り広げられる地獄絵図というアイロニー。 カーアクションの撮影はなかなかすごいと感じた。 二台の車は接触し続けて上下にガタガタ映像もぶんぶん揺れ続け そのスピードを維持してフロントガラスの真上から撮ったように 灯や光源が後ろに流され タイヤを飛ばし全てを吹き飛ばすクライマックスに収束するシークエンス。 東南アジアの不法労働者のいる繁華街がセットだったとは... 屋台のビニールの色が雨に滲み 21世紀らしい、無国籍なロケーションの雰囲気、じっとりした温度感に湿度を醸し出していた。 3回位?俯瞰される、タルトンネのようなアンナム市の街並みは 眠っているように映るだけ。 ふつうの市民が出てこない、 屋根の上の俯瞰だけで、市民の(庶民の)息遣いがほとんど聞こえない、 仮想的架空的アンナム<ゴッサム>市ならではの世界観。 その下の方で、公務員たちが阿修羅のごとく戦い続けていたのだ。 (余談:検事は嶺南(영남=慶尚道)の地方大出身と言っていたが その後特に地域の話は出て来なかった。ふむ) エンディング曲は レッド・ツェッペリン Led Zeppelin リード・ボーカルだったロバート・プラント Robert Plant の アルバム「Band of Joy」から Satan, Your Kingdom Must Come Down(2010年) オリジナルは大恐慌の時(1931年)に作られたブルース、カントリーなのですね... ロバート・プラントのは意外と最近のリリース... to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用・ 盗用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 1, 2024 09:13:44 PM
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