有頂天家族 森見登美彦著
京都に住む狸の家族と天狗の師匠、天狗になった女「弁天」が繰り広げるちょっと軽い家族の話。三男による「私」の視点が中心に描かれるが、三男が見ていない部分も「弟」などのように三男からの語りによるような、しかしかなり客観的な書き方で進行していく。忘年会で狸鍋をする金曜倶楽部によって食べられてしまった父の思い出、伯父と兄との地位争い、狸を愛するが故に食べてしまいたいという教授、父を食べた一人の弁天へいだく恋心の矛盾、プライドを突き通す天狗に同調するふりをしてお互い心の内はわかり合っている三男、など軽いタッチで微妙な心理を描く。じーんと来るほどではないが、軽い読み物として充分に楽しめる。少し厚めの本だが一日で読み切れた。