ファイル04/彼女が望んだもの
中四国では6日放映となったアニメ版『ゴルゴ13』の第4話。何分単行本を持っているわけではないので、放映の度に感想ネタを書くため古本屋に出かけて単行本を漁る日々になりそうです(苦笑)〔Target.4:プリティ・ウーマン〕 原作:『レディ・ビッチ』リイド社SPコミックス第25巻収録(1975年初出)CAST リンダ:岡本麻弥 マーティ・オブライエン:亀井三郎 ビリィ:西凜太郎 ニューヨーク・マンハッタンのギャンブルを牛耳るマフィアのボス、マーティ・オブライエンの愛人リンダ。彼女は6年前に娼婦からボスの女にのし上がった身だった。「俺は死んだっておまえを離しはしねぇ、おまえも男なしではおれない女だ」と彼女を日々溺愛するマーティだったが、リンダはマーティの束縛から逃れて真の"レディ"になりたいと望んでいた。 そんなある日、リンダはオペラハウスに出かけたのを利用してゴルゴ13に接触し、セントラルホテルの1204号室で落ち合い、マーティの殺害を依頼する。彼女はマーティから逃れてフロリダに移り、そこで人生をやり直そうと考えていた。室内をチェックするゴルゴ13の逞しい姿を目の当たりにして、リンダは思わず彼に抱かれる妄想を思い浮かべてしまう・・・ オペラハウスから戻ってきたリンダを出迎えたのはマーティの手下の一人リッキー。リッキーは何かと彼女に言い寄るが、リンダは相手にしない。一方、マーティの用心棒のビリィはリンダが偽名でセントラルホテルの1204号室に来て誰かと会っていたことを突き止めるが、彼女が会っていた相手の痕跡が残っていないことに疑問を感じて調べていた。部屋を出たビリィはそこでゴルゴ13と遭遇、彼が咄嗟に拳銃を抜いた速さを見たゴルゴ13は自分とほぼ互角と看破、ビリィもまた立ち去るゴルゴ13を只者ではないと感じる。 アジトのビルに戻ったリッキーとリンダは、マーティからセントラルホテルで会っていたかどうかを詰問される。リッキーは否定するが、自分が書いたメモの痕跡を見つけられたリンダは動揺してつい頷いてしまい、リッキーはマーティの部下たちによって部屋の窓から階下に投げ落とされて殺されてしまう。 ブティックに買い物に向かうリンダに、彼女の身を案じるマーティは護衛の部下を張り付けるが、リンダは言葉巧みに彼らを追い払うと携帯電話でゴルゴ13に一緒にフロリダに行こうと誘いをかける。 一方、殺されたリッキーの弟は仲間たちと共にマーティへの報復を決意していた。ゴルゴ13はその様子を静かに窺う・・・ その頃、ビリィはセントラルホテルの監視カメラの映像を調べた探偵から、リンダが会っていたのがリッキーではなく自分が遭遇した東洋人の男だったこと、そしてその男がゴルゴ13であることを知らされる。渋る探偵にビリィは大金を積んでゴルゴ13の居所を調べさせる。「ゴルゴは背中を見せないそうだ・・・俺が見てやるさ、血に染まった奴の背中をな!」 その夜、ビリィからリンダがゴルゴ13と会っていたことを知らされたマーティは、彼女の狙いがゴルゴ13に自分を殺させることだと気付いて愕然とする。リンダはゴルゴ13が一向に知らせをくれないことに不満を感じていたが、マーティは怒りを押し殺してそんな彼女を外出に連れ出し、彼女の目の前でゴルゴ13を殺るようビリィに命じる。 アジトのビルから出てくるビリィ、マーティ、リンダ。そこへ、待ち構えていたリッキーの弟と仲間の4人が拳銃を手に襲撃を仕掛けてきた。4人はビリィによって瞬く間に片付けられるが、その隙に身を潜めていたゴルゴ13がサイレンサー付きの拳銃でマーティを射殺! ビリィはリンダを連れて車でゴルゴ13の泊まっているホテルへと向かう。 マーティがいずれはリンダのために命を落とすと思っていたビリィは、彼女をマーティの疫病神だと皮肉る。そのおかげで彼の縄張りをそっくりいただけるじゃないとリンダは言うが、ビリィはきっぱりと言い捨てる。「人間にはな、それぞれ向き不向きってもんがある。俺はボスになる器じゃないんだ・・・おまえがどんなに憧れても大富豪の若奥様になれる器じゃないようにな」 ゴルゴ13の泊まるホテルに着いたビリィは、車からリンダを降ろそうとしてゴルゴ13の姿に気付き、雨の降りしきる中で対峙する。次の瞬間、リンダの腕を放したビリィとゴルゴ13は同時に拳銃を抜くが、銃弾に斃れたのはビリィだった。リンダの腕を取っていた自分の隙を突いた相手に敬服しながら息絶えるビリィ。これでやっと"プリティ・ウーマン"になれると喜ぶリンダだったが、ゴルゴ13は彼女に背を向けて立ち去ろうとする。自分をこれだけその気にさせておきながら自分になびかない彼に怒りを覚えたリンダは思わずビリィの拳銃を手に彼を狙うが、振り向きざまの彼の銃弾に斃れるのだった――――――「出てしまえ・・・汚れた血なんか、みんな・・・流れ出てしまえば、いいんだ・・・」○○○○○○ 今回の第4話、最初タイトルを聞いたときは「原作にそんな話あったか?」と首を傾げたのですが、蓋を開けてみれば1975年初出の『レディ・ビッチ』の改題だったのでした。アニメでタイトルが変更されたのは原作タイトルの中に英語の代表的なタブー語である"ビッチ"が入ってるのがマズかったのかなぁと推測しますが、どうせ公式サイトで原題を出してるんだから意味ない気も(苦笑) 第1話であれだけエ○シーン全開だったのに喫煙とか差別的表現とかは自主規制なのか描写されないテレ東の放送コードって今一つよくわかりまへん(爆) まぁそんなわけで、第1話以来久々にアレなシーンが多めだった今回(笑)田舎出の娼婦からマフィアのボスの情婦に上り詰めたものの、真の"レディ"になりたいと望んで自分を束縛するボスの殺しをゴルゴ13に依頼した女性リンダ。しかし、彼が纏う男のフェロモンにほだされたのが運の尽きだったのか、最期は自分になびかない彼に銃口を向けて自滅するハメに・・・原作ではリンダは一方的にゴルゴ13に妄想を抱いた末に自滅していくのに対し、アニメ版では彼にフロリダに来ないかと誘いを入れ、彼女が自分になびかない彼を最終的に憎んでしまう結末をより明確にした感があります。 所詮自分は"レディ"など望むべくもない雌犬(ビッチ)に過ぎないと自覚していながら、それでもそれを望まずにいられなかった彼女の哀しい生き様をアニメ版でも巧く描写できていたように思います。ゴルゴ13を一目見てその"男"っぷりに惚れてしまうも様々な形で救われない結末を迎えてしまう女性が多いですが、リンダもそんな哀しい女性の一人といえます。 全体的には今回も概ね原作に沿った展開でしたが、マーティや手下のリッキーがリンダをやたら"好き者"呼ばわりする台詞など差別的なニュアンスのある表現は流石にTV放映を考慮してか端折られています。原作でのリンダの最期の台詞の中にある「雌犬の血」もアニメ版では「汚れた血」に変わってたし。また、原作ではリンダと密会した疑惑を持たれたリッキーはその時一緒にいた贔屓の娼婦に助けを求めるもウソを吐かれてしまったためマーティの部下にビルから投げ殺され、リッキーの弟たちはマーティの部下の一人を襲ってその経緯を知りますが、この辺の顛末は尺の都合か単純化されています。また、用心棒のビリィがリンダの接触相手に疑問を持つシーンも、原作では部屋に残されていた細巻きの葉巻の吸い殻がキーになりますがアニメ版では省略。やっぱりアニメ版のゴルゴ13は葉巻吸わない設定なんでしょうか?『ゴルゴ13』の魅力の一つといえば、最後はゴルゴ13に敗れてしまうものの強烈な存在感を残す敵役が随所に登場する点ですが、今回の用心棒ビリィもそんなキャラの一人。早撃ちではゴルゴ13も一目置くほどの腕前を持ち、ボスが死んでも「俺はボスの器じゃない」と謙虚にあくまでボスの仇を取ろうとする男気が光るだけに、あっさり倒されるやられ役なのは惜しいところ。ちなみに、ビリィの早撃ちの速さを見抜くゴルゴ13ですが、原作ではリッキーが投げ殺されるところを外のビルから見ていたときにチェックしていますが、アニメ版ではリンダと落ち合ったホテルの廊下で直接対面したときにチェックしています。 なお、原作のビリィはコルト・ガバメント系のオートを使いますが、アニメ版ではSIG/ザウェルP220系(P226かP228?)を使っているのが今風か。一方のゴルゴ13は、マーティを仕留めるシーンではディテールがはっきりしませんがサイレンサー付きの自動拳銃を使用し、最後のビリィとの一騎打ちは原作通りのリボルバーでした。流石にアニメ版では原作でしょっちゅう出てくる"リボルバー+サイレンサー"はやらないかな?(笑) さて、そのゴルゴ13の早撃ちの速さが明らかになるエピソード『動作・24分の1』はアニメ化されるのだろうか・・・