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クリームな日々

落合恵子「積極的その日暮らし」08,12,27

とにもかくにも、年の暮れ、である。「とにもかくにも」に、万感の思いを込める。

 この寒空の下、職を失い、寮を出なければならなくなった人たちはどうすればいいのか。
その人たちの向こうに、介護が必要なお年寄りの顔が見える、こどもたちがいる。

株主には配当しながら、つまり利益は出しながら、それでも働くものを切るのか。
小さな会社を32年間、「とにもかくにも」やってきた私には、論外としか思えない。

 1月から11月までで過去最悪を記録した上場企業の倒産件数。
件数だけでは人は見えない。
無機的な数字の向こうには、ひたすら職務を全うしてきたひとりひとりと、その家族がいる。

 海外にも名を馳せた企業が、次々に社員や期間労働者の「整理」を発表している。「それならうちも」の流れが、これでできてしまう恐さ。その流れに乗ることが、「資本主義」であるような。

会社そのものを守るためなのかもしれないが、「とにもかくにも」会社を支えてきたのは、働くものひとりひとりの力だったはずだ。

 未曾有の不況下、町工場などの中には、社長自らが他に働きに出て何とか給料を工面するケースも少なくない。いい事かどうかはわからないが、その必死さ、切実さがはたらくものの納得と結びつくのではないか。
「社長があそこまで頑張っているのだから」と。

 20年前の12月、消費税法が成立した。
その20年後、2008年はどんな年であったと回顧されるか。
いまこの時代の、ひとりひとりの痛みを忘れてはならない。と、天衝く怒髪のまま、迎える年の瀬。

 少しはましな年にしたい、2009年まで5日。
年の瀬に交わす、「よいお年を」という挨拶が、喉の奥に止まっている。

 「とにもかくにも」わたしたちは生きていかなくてはならない。
だから、今年最後のこの連載に、「とにもかくにも」書くしかない、よいお年を、と。
(2008,12,27、朝日新聞)


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