胸いっぱいの感謝
クロージングトーナメントの予選最終戦の試合終了のホイッスルが鳴り響き、初夏の到来を告げる斜陽がまだ鮮やかにピッチに照り返している。仲間の悔しさを滲ました表情、相手チームの歓喜。そしてもう左腕にキャプテンマークを巻くことはないのだと思うと、少し寂しい気がした。サッカーに、そしてチームに真摯に向き合い続けることを決めてから1年が経ったのだ。やがて夕暮れの陽が美しい光束となって、シーズンエンドパーティの参加者達を等しく彩る。僕等の座るテーブルからは、遠く隣接するゴルフ場のなだらかで柔らかな芝生の起伏が見える。頭上を見上げると、北極星がもう6月の帳に煌びやかな姿を見せている。心から美しい瞬間だと思う。人生の一瞬、だけれど確かにサッカーを通じて交差した人々の温もりに包まれた一時。ヨーロッパ、南米、アジア、オセアニア、アメリカ・・・・拙いかすかな英語でだけれど、確かに繋がった人々との交流。この1年を、どう形容したらいいのだろうか?この1年自分がやってきたことがなんだったのか?この1年自分が向き合い続けた物事がなんだったのか?キャプテンのオファーを受けて、自分なりに悩み抜いた末に、それを引き受けたこと。サッカーが上手なわけでもない。リーダシップで集団を纏めるというよりも、元来自分が納得できればそれでいいと思う個人主義のタイプ。誰とでも仲良くなれるわけでもない。何故だろう。それでもそれを是非やってみたいと思う、自分がいた。それからの1年は本当に等比級数のようにあっという間に過ぎ去り、今日このパーティの宴に帰結したわけだ。チームの結果には満足をしていない。チームの結果を最良に導けず悔しい気持ちも多分にある。いっぱい失敗をし、沢山間違いを犯し、選択を多々誤まり、もうドジばっかりだった。それでもなんだろう。この充実感は。終わりの段になって、初めて気付く。ああ、俺はこの仲間と、この仲間達と1年を向き合い続けることができたんだな。と。そして仲間も同じく僕と向き合ってくれたんだと。だからこそ今のこの瞬間、このぬくもりがある。それこそが僕のこの1年の一切だったんだ。と。こんなに苦しくて、しんどくて、でもこれほどの充実感、達成感はない。逃げないこと、言い訳をしないこと。そして真摯であること。乾杯を酌み交わし、だれかれともなく「ありがとう」或いは「お疲れ」という言葉をいただく。それが全てなのだ。僕はそれだけでもう単純で、真っ直ぐで、それだけでもう本当に仲間に、チームに胸いっぱいだ。感謝。感謝。ひたすらの感謝。