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テーマ:中国&台湾(3304)
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1.3 日本産果物の対中輸出の推移
アジア諸国・地域では、経済発展による高所得層の増加や、日本食ブームなどから、 高級贈答品として日本産果物の人気が高まり、1999年から2003年までの4年間に、中国台湾向けのリンゴ輸出が13.3倍に、中国香港向けではイチゴ輸出が3.5倍に伸びるなど、輸出が急増している。このため日本農水省は、経済成長が著しい中国大陸も、農産物の輸出市場として有力と判断している。現地ではかなり割高だが、日本国内生産者らの努力が実り、「安全・安心」をキーワードに中国富裕層の心をつかみ始めた。守勢が目立った日本の農業政策が行き詰まり、工業品のように海外に販路を拡大する姿勢に転換したのも追い風である。巨大な中国市場が日本の農林水産業を多少変貌させる可能性がある。財務省関税局のデータによると、中国本土への果実の輸出は1994年にはわずか1890万円だったが、2004年には4億5750万円と20倍以上に跳ね上がった。これから日本の果物が中国を中心にアジアへ積極的に輸出されるようになると思われる。 1.3.1 台湾市場に進出 果物輸出を輸出先別品目別にみると、輸出先としては台湾が、中でもリンゴの割合が大きくなっている。過去10年間の推移で見てみると、2002年から急増して、「台湾へのリンゴ輸出」が果物輸出の増加における主因となっている。10年前のリンゴ輸出は台湾、香港、タイが三分していたが、2003年には台湾のみで9割以上を占めた。これは、2002年に台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟したことが契機となっている。日本産リンゴの輸入割当数量が撤廃され、関税も50%から20%に下がり、輸出しやすい環境が整ってきている。「世界一」「陸奥」等の高級品種に引き合いがあるが、日本産リンゴが浸透してきて、「ふじ」「王林」等の普通品種の消費も増加している。WTO加入後の輸入枠が撤廃された台湾への日本のりんごの輸出量は8,376トン(2002年)と加盟前の4倍に増え、日本からの果物の輸入品は品質において「別格」扱いで、高級品として定着している。 日本一のリンゴ産地である青森では、この好機にさらなる輸出増加を目指し、様々な取組を行っている。2002年には青森県が「青森りんご輸出拡大推進事業」を計画し、輸出量の増大を図るため、台湾の百貨店でのリンゴ見本市や、台湾の現地業者向け販売促進講習を開催した。 2004年7月に、JA全農とっとりは鳥取県産スイカを台湾に初輸出した。二十世紀ナシの輸出ルートを利用して、スイカ1玉(7キロ)入りの箱、130箱を輸出、台北市内の百貨店などで販売した。台湾のスイカは日本産に比べて小振りで甘みが少ないため、甘くて大きな日本産スイカは新しい果物として受け入れられるとみている。 1.3.2 香港市場に進出 中国香港特別行政区の人口は約600万人。イギリスから返還後も特別行政区として自由貿易を中国中央政府から保証されている。600万の中の160万人が富裕層として存在する。香港は米国に次ぐ、日本食品の輸出先であり、中国大陸市場を開拓する際の参考になると思われる。香港の食品市場は初め、大丸、三越、そごう、西武など日系のデパートからスタートし、次に、ヤオハン、ユニー、ジャスコなど日本のスーパーが進出し、現在はパークンショップ、ウェルカムなどの地場のスーパーが日本食品コーナーを作り、取扱い品目を増やすという展開になっている。日系スーパーに限らず現地香港系のスーパーでも日本産の果物や野菜などの日本食品が置かれ、日本食品を扱うスーパー、百貨店の数、アイテム数、売り場面積、レストラン数もたくさんある。香港で日本から輸入された日本食品を食べている人の7~8割は現地の人達で、「日本食を食べるのはステータス」として、若い人達からも支持を受けている。香港で日本食品が受け入れられている一つの理由に、日本文化の浸透が上げられる。香港には子供の漫画から始まって、映画、テレビドラマ、ファッション雑誌など様々な日本文化が流入している。その中には日本の食文化も取り上げられていることも日本食品が売れている一因である。 香港では日本各地の果物が販売されている。2005年1月栃木県産フルーツが香港へ向け商業ベースとして初輸出を遂げた。栃木市のJAしもつけは1月下旬、主力品「とちおとめ」イチゴ1,000パックを香港に初輸出。330グラムの1パックが香港の店頭では、日本国内の約2倍にあたる約1,200円の高値だったにもかかわらず、わずか4日間で完売したこともあって、3月までに5,500パックを空輸した。輸出を進める、社団法人とちぎ農産物マーケティング協会は、品質管理にこだわった。生産農家を栽培優秀な12戸に限定したり、輸送中の傷みを防ぐためパッケージに緩衝材を入れたりするなど対策をとった。将来的には巨大な中国市場への進出も視野に入れて、まずは香港から攻めるという戦略をとっている。自由貿易の香港では、本土進出のための「予行演習」が行われている。全国1位の生産量を誇る栃木県産のイチゴがその一例である。 福岡県地域食品輸出振興協議会(県、JAふくれん中央会など8団体)も香港では2002年、台湾では2004年から、現地で商談会を開催。香港向けは2005年度から定期的な輸出が始まった。台北市では2005年1月に開いた「福岡フードフェア」で「あまおう」が人気となり、注目したデパートやショッピングモールなど7店舗が2月末から「あまおうフェア」を開いている。この結果、香港・台湾向けの「あまおう」の2005年度輸出量は、フェア開始前の2月上旬までに、前年度対比5倍以上の約8トン(27,000パック)に達した。1パック1,000~1,500円の「あまおう」のほか、1キロ1万円の「巨峰」も予想以上の人気を呼んでいる。協議会はこの勢いに乗って来年度、中国本土進出を目指して上海で商談会や販促フェアを計画しており、県も支援を拡大する。 それに、香港はカナダについで日本産みかんの2番目の輸出先である。2002年の輸出数量は138トン、金額は23,000千円。 1.3.3 中国大陸市場に進出 2004年9月、10月は、日本産果物について北京、上海、青島において展示、販売、試食などの催しが相次いで行われ、中国市場へのアプローチが目立っている。 北京:2004年10月11日に日本貿易振興機構の主催で「日本産農産品紹介セミナー」が行われ、中国の農業、貿易関係者も出席した。日本園芸農業協同組合連合会からの講師が、日本での果実栽培の特徴を紹介した。セミナーの後には日本産のみかん、梨、りんご、ぶどう、柿といった果物の試食会も行われ、初めて口にした中国側参加者にも好評であった。また、10月11日から15日まで、北京の全国農業展覧館では中国農業部の主催により「中国国際農産品交易会」が開催され、この会場でも上記の日本産果物は展示と試食を通じて参観者に大いにアピールした。 上海:2004年9月20日にはJETRO上海センターが、市内デパートに「日本産果物コーナー」を設置し、青森県、岩手県、茨城県、長野県、鳥取県、熊本県の6県から輸出されたナシ3品種、リンゴ4品種の合計7品種について2005年2月までの5カ月間限定で試験販売を始めた。最も高い熊本県の「新高」梨が1個88元(約1200円)のほか、青森県の「陸奥」りんご及び鳥取、長野県の「二十世紀」梨が1個28元(約370円)である。 鳥取県の「二十世紀」梨が、「口当たりがサクッとさわやかで、香りも高く、甘くジューシーで、たくさん食べても飽きない。」と高い評価を受けている。 青森県のリンゴも中国で人気である。2004年1月、上海向けにテスト輸出を開始し、11トンを送り込んだ。2004年11月から輸出を本格化させ、2004年12月までに29トンを輸出した。中国はリンゴ生産量が日本の20倍以上という世界一のリンゴ産地であるが、高級品種では競合しないとみており、都市部の富裕層を中心に日本産リンゴの消費が期待されている。 JA全農いばらき(茨城県)は2005年夏、商業ベースでの中国への輸出に初めて挑戦する。商品は県内産のナシ約12トン。2004年秋に上海で試験販売した結果、日本の3倍近い1個1100円を超える高値だったにもかかわらず、「甘みと酸味のバランスが取れておいしい」との評判で売れたからである。 青島:2004年10月8日から一週間、佳世客(ジャスコ)で日本食品フェアが開催され、和菓子、紅茶、ビール等とともに梨の「新高」「伊万里」が展示・販売された。「新高」については、日本で研究開発された新品種で、ジューシーで口当たりがよく、鮮度が長持ちするという紹介が行われた。報道によれば、日本の食品は小さいというイメージがあるなかで、「新高」はその大きさが注目されたという。 今のところ日本から中国へ輸出できる果物はリンゴとナシしかない。リンゴとナシに続いて、日本からの輸出候補に上がるのが、モモ、ブドウ、柑橘類、カキ、イチゴなどである。 日本農水省が中国に対し、メロン、柑橘類、ナシ、イチゴ、サクランボ、モモ、ブドウ、カキ、スイカ、キウイなど国産農産物計12品目の輸入受け入れを求めて本格交渉に入ったことが2004年9月14日、明らかになった。すでに中国側に病気や害虫の発生や生産状況の資料を提出して、輸入受け入れのための検疫体制の整備を求めている。日本が多品目にわたる包括的な農産物の輸出交渉を行うのは初めて。日本の農産品は中国産の輸入品に押されてきたが、輸出促進で反転攻勢をかける。 こうして、日本産果物の対中輸出がどんどん増えてきた。1998年から2004年までの6年間、輸出数量が100倍、金額が31倍に増えた。2005年1月から3月は前年同期と比べて、数量が131.58%、金額が151.10%増加した。1998年対中輸出果物が日本輸出果物総量に対する割合はわずか0.17%だったが、2004年は9.44%に達した。2005年1月から3月はさらに11.07%になった。 表1.7 中国(大陸)向け輸出の日本産果実の数量と金額 (略) 表1.8 対中輸出果物が日本輸出果物総量に対する割合の推移(略) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年07月04日 17時28分07秒
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