昨日は、宝生能楽堂に、「第50回 野村狂言座」を観に参りました。
昨日の演目は、狂言「梟山伏」、「長光」、「塗師平六」、素囃子「男舞」、狂言「二人袴」。
狂言「梟山伏」。山から帰って以来、梟に取り付かれて様子がおかしくなった弟(岡聡史)を兄(深田博冶)が、山伏(高野和憲)に頼み、祈って治そうとするが、弟は体を掻きむしり、「ボッホーイ」と奇声を発するばかりで、いっこうに効果があらわれません。それどころか、祈るほどに梟はその兄にも憑き、果ては山伏自身にもとり憑いてしまいます。
狂言「長光」。市を見物している男(月崎晴夫)の持つ太刀に目をつけたすっぱ(野村万之介)は、男のすきを見て自分の太刀であるかのようにするので、気がついた男と言い争いになります。所の目代(野村万作)が仲裁に入り、それぞれに太刀の特徴を言わせます。すっぱは盗み聞きでなんとか対応するが、今度は男が太刀の長さを小声で言うので、すっぱはこれには答えられず、正体を見破られ、隠し持っていた盗品を露わにしつつ、逃げ込みます。
狂言「塗師平六」。越前の国 北の庄に住む塗師の平六(野村万作)を頼り、都から塗師の師匠(野村万之介)がやってきます。都では仕事がなくなったので、当地で平六と共に稼ぎたい旨、その妻(野村萬斎)に伝えます。妻は、師匠に居られては 平六の商売の妨げになると考え、追い返すため、夫は三年前に亡くなったと嘘をつきます。そこへ平六が現れると、師匠の前へ出てはならないと妻がとめるも、どうあってもお目にかかると言い張ります。それならば離縁してくれと妻が言い出すと、平六もしぶしぶ妻の言う通り、幽霊のふりをして師匠の前に出ることに。
前半が狂言で、後半の幽霊に化けた平六が出てきてからは、能仕立てになる面白い趣の狂言。これは、確か2回目だったと思うのですが、なんだか、内容が身につまされます。不景気の世の中、仕事がなく、都落ち。一方奥さんは、田舎だから、あまり技術がなくても、仕事ができるのに、都の職人がきたら、夫の仕事がなくなる…。今の世でもありそうな話です。
萬斎さん、また細くなられた気がして…。妻の後姿が繊細で、美しかった。
狂言「二人袴」。聟(野村裕基)が聟入りに父親(野村萬斎)が付いて行き、門前で待っていると、太郎冠者(竹山悠樹)に見つけられて、座敷に出なければならないことになります。しかし、袴は一つしかない。聟と親とは、交互に袴を着けて舅(石田幸雄)の前に出るが、盃事ができないから両人一緒にと言われ、袴が前後に裂けたのを幸い、二人は袴の半分をそれぞれ前に当て、出ます。盃事の時、聟は舞を所望され、うしろを見られないように舞うが、親子と舅と三人の相舞になり、太郎冠者に袴のうしろがないことを見つけられてしまいます。
正直、裕基君の「二人袴」は、まだ早すぎるのでは~と思っていたのですが。 婿のセリフに妻の懐妊らしきことなどが出てくるし。
でも、裕基君は、舞台が好きなのでしょうね。よくお稽古されたお芝居で、いまにない、「二人袴」を見ることができた感じで面白かったです。
萬斎さんの親も、二度目でしょうか。前回、野村遼太君の時は、なんだか、すごく若い父親という感じで、少し違和感もあったのですが、今回は、やはり、裕基君のお父さんだし。“らしかった”気がしました。