日曜日に、めぐろパーシモンホールに、「めぐろパーシモンホール開館10周年記念事業 夏のめぐろろうそく能と狂言」を観にまいりました。
この日の番組は、仕舞「猩々」、狂言「末広がり」、能「石橋 大獅子」。
まずは、金子直樹さんによる「本日の演目解説」。とてもなめらかな、聞きやすいお声で、毎回、わかりやすい解説をしてくださいます。
仕舞「猩々」。井上和真。中国の古い話。金山の麓、揚子の里に住む孝行息子高風は夢のお告げを受け、市場に酒屋を出します。客の中にいつも来てくれる酒の強い男がいました。高風が名を尋ねると、海中に住む猩々だと答えます。九月の月の晩に高風は酒壺を持ち川のほとりに出向き、待つと、猩々が波間から現れます。酩酊するほどに酒を飲み、高風の親子孝行をほめ、汲めども尽きぬ酒壺を高風に与え、去ってゆきます。その猩々が高風に酌めども尽きぬ酒壺を与え、酒を酌み交わし、酩酊し、喜び舞う場面の仕舞です。
ですが、舞ったのは、子方の男の子、小学校の低学年でしょうか。初々しい舞いでした。
狂言「末広がり」。果報者(野村万作)が招いた客に末広がり(扇)を贈ろうと、太郎冠者(野村萬斎)を都に買いにゆかせます。ところが太郎冠者は末広がりが何のことだか知りません。声を掛けてきた男(石田幸雄)の巧みな言葉に魅せられ、古傘を末広がりと信じ込んでしまいます。そして男は主人の機嫌を直すためにと、囃子物まで教えてくれます。大喜びの太郎冠者は早速屋敷に帰ると、古傘を果報者にみせるのですが...当然のごとく、起こられ、追い出されてしまいます。が、男が教えてくれた囃子物で、無事に果報者の機嫌を直したのでした。
長袴で、果報者の万作さん登場。相変わらず、きりりとした品のある美しい御姿です。 その後から、太郎冠者。エッ、あれ、誰?今日は、萬斎さんが太郎冠者をおやりになるはずなのに…。あの見慣れないくりくり坊主は誰?
ここで、ようやく思い出しました。萬斎さんは、先月の舞台「薮原検校」で、高校球児なみの坊主頭にされたのでしたっけ。あんなに短くされたのだから、そう簡単には元の長さにならなわいわよねえ。1ヶ月ぶりにお会いしたので、忘れてました。
頭は見慣れないけれど、立ち振る舞いや、謡のお声は、狂言でした。当たり前ですが。やっぱり、萬斎さんの狂言はいいなあ。
果報者とは主人ですが、お金持ちの人というような意味があるようです。正月の狂言ですが、今回は、10周年の記念ということで、お目出度い狂言にしたようですね。
能「石橋 大獅子」。寂昭法師(ワキ・宝生欣哉)が入唐し、唐の各地を廻り、石橋のある清涼山にやって来ます。石橋のことを訊ねたいと人を待っていると、一人の老人(井上療治)がやって来ます。法師が石橋を渡ろうとすると、この橋はたやすく渡れる橋ではないと諭されます。この橋は難行、苦行、捨身の業を収めて、初めて渡れるもの。幅が一尺にも満たない苔に覆われた橋は数千丈の谷にかかり、滝波は雲より落ちかかり、滝壺まで霧深く、身の毛もよだつ深い谷にあります。まずは、暫く待つようと言い残して去ってゆきます。そして、そこに紅白四匹の獅子が現れ、咲き乱れた牡丹に戯れ、勇壮・華麗な獅子舞を舞い、泰平の世のめでたさを祝います。
今回は「大獅子」の小書きにより、紅白四匹の獅子が登場。確かこの小書きで観たのは2回目だと思いますが、さすがに4匹もの獅子が舞うと、豪華で見応えがあります。